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「ヴィーガンになって筋力が上がった」元120円Jリーガー・安彦考真(44)がプロ格闘家に転身…元西武・相内誠と“異種球技戦”へ
posted2022/02/15 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
41歳でJリーガーとして史上最年長デビュー。今回は44歳で格闘家としてプロデビューを果たす。その略歴だけで判断したら、安彦孝真の人生は“色モノ”と見られても不思議ではない。しかしジムメイトはこう否定する。
「色モノだったら、こんなに練習しないよ」
安彦は「色モノと見られても仕方ない、という覚悟のもとでやっている」と穏やかな口調で語り始めた。
「ただ僕としては、世の中は可能性に溢れ、自分が何かを始めたら変わるんじゃないか。そういう思いを胸に本気になって冒険しているつもり。決して色モノではない」
「人生100年、まだ折り返しにも来ていない」
どうやら強さだけを追い求めているわけではないようだ。では、安彦は何を求めているのか。お金、名誉、地位、SNSのフォロワーの数……。他のプロ格闘家なら間違いなく「欲しいものランキング」の上位に入っているそれらを、安彦はどうでもいいものだと感じている。
「人生の醍醐味は選択と決断と実行だと思っている。すべて自分でできるじゃないですか。そのためには行動ではなく、“即行動”が大事。行動が大事という意見もあるけど、1カ月後に動いたら時すでに遅し、ということもある。僕は即行動のあとにこそ、選択があると思う」
ひとつ大きな疑問がわく。人は30~40代になると、往々にして安定思考に走りがちだ。大多数は安彦とは真逆の方向に向かっている。家庭、地位、老後への備え……。歳を重ねるごとに、守るべきものが多くなるからか。安彦は「大人になると、変わることへの恐怖心がある」と分析したうえで持論を展開した。
「でも、人生100年と考えたら、まだ折り返し地点にも来ていない。そう考えるといまから安全パイを切るのは難しい。サッカーに例えると、前半まだ30分しか経っていないのに、残りはずっと流すなんてできない。いま僕らに必要なのは捨てる勇気だと思う」
格闘技のためだったら、過去のプライドなど余計なものはすべて捨てる覚悟がある。
「いつまでも過去を引きずることは、果たしていまを語ることになるのか。これからの時代は説得力が一番大事だと思っている。そういう意味でいうと、過去を語っている人よりいまを語っている人の方が説得力はある」
一歩踏み出す勇気は必要なかった?
「ハイ。そういう勇気は必要なかったというか、気がついたら踏み出していた感じですね」