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“RIZIN漢塾塾長”石渡伸太郎(36)引退のアツい舞台裏…“兄弟”扇久保博正との友情「次はお互いの弟子同士で」
posted2022/02/05 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
2022年のRIZINは、2月23日の静岡大会からスタートする。ナンバーシリーズ、ケージ大会『RIZIN TRIGGER』、配信主体の『RIZIN LANDMARK』合わせて年間15~17大会を開催する予定だ。
1月には、RIZINとは別の大会ではあるが、2021年のエピローグのような闘いも行なわれた。23日、ニューピアホールでの石渡伸太郎引退興行だ。
人呼んで“RIZIN漢塾塾長”。真っ向勝負を持ち味とする日本バンタム級トップの一角は、昨年6月、RIZINバンタム級JAPAN GPの1回戦で井上直樹に敗れ、引退を決意した。すでに首をはじめ満身創痍の状態だった。
石渡と扇久保は互いを「兄弟」と呼ぶ
引退興行では、公式戦ではなくエキシビションマッチのリングに上がった。対戦相手は扇久保博正。石渡が引退を決意したバンタム級GPで優勝した選手だ。準決勝では、石渡を下して評価を高めた井上に勝っている。
石渡と扇久保はお互いを「兄弟」と呼ぶ関係だ。2019年、RIZIN大晦日大会での対戦で絆を深めた。見る側としても、この2人が檜舞台で思い切り殴り合う姿には感慨があった。
2人が台頭した時代の格闘技界
石渡は1985年生まれ、2006年3月にプロデビューした。扇久保は1987年生まれで、石渡と同じ2006年の10月にプロ初戦を行なっている。
一世を風靡したPRIDEの最終興行が開催されたのは2007年のこと。後継団体DREAMは、思うようには盛り上がらなかった。RIZINが軌道に乗って、日本MMAにようやく“世間に伝わるメジャーイベント”が戻ってきたのだと言える。
だが、PRIDEからRIZINの間の期間を簡単に“冬の時代”、“谷間の時代”とは言いたくない。そういう時期に石渡や扇久保たちが台頭し、UFCを頂点とする“世界”を視野に入れた闘いを見せてくれた。
2013年、ケージ大会VTJではパンクラス王者・石渡と修斗世界王者の堀口恭司が名勝負を展開した。堀口は扇久保に勝って修斗のベルトを巻いたのだった。
2014年、PRIDEもDREAMも開催されなくなった大晦日のさいたまスーパーアリーナで、年末ビッグマッチの火を繋いだのはDEEP。石渡はパンクラス王者として乗り込み、DEEP王者の大塚隆史をKOした。あの日、石渡が見せた強さと表情ひとつ変えずに相手を叩きのめす怖さは、今でも忘れられない。
「相手が疲れるまで我慢して、疲れてきたら攻める」
強豪外国人との試合について、石渡はそう表現している。見ていてもしんどい闘いは、だからこそ感情移入できるものだった。石渡や扇久保のような、経験豊富な“叩き上げ”がいるからこそ、RIZINのマッチメイクには厚みが出た。