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長野五輪で禁止技「後方宙返り」を披露…“女子フィギュア界の異端児”スルヤ・ボナリーを知っていますか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/02/07 17:00
長野五輪で禁止技「後方宙返り」を披露したスルヤ・ボナリー
象徴的なのは、1994年の世界選手権だ。佐藤有香に僅差の2位という結果に終わると、採点に納得がいかず、当初は表彰式に現れなかった。ようやく現れ表彰台に立ったが、メダルはすぐさま首から外し、不満を態度で表明した。
ボナリーはいつも、採点と自身の手ごたえとの差に苦しんできた。「黒人スケーターだから」という声もなかったわけではない。
当時の採点基準は現在よりも曖昧で、ジャッジの主観が入る余地があったのも否めない。ボナリーに限らず、当時の選手やコーチの中に、出された成績に対し疑問を持つ人は稀ではなかったとも聞く。
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その採点基準のもとで、ボナリーは表現面で低い評価を受け、また高難度のジャンプに挑むものの、回転不足などをしばしば指摘されていた。また、先にあげた世界選手権に関して言えば、ボナリーが果敢に難しいジャンプに挑む一方で、ステップやスケーティングをはじめ佐藤の演技が素晴らしかったのも事実だ。
ルールにとらわれず、自分を表現しようとした
自身に下される評価とのギャップに苦しんできたボナリーが正しかったのか。そうではなかったのか。その答えは、容易に導き出せない。
ただ、大会に出ても納得のいかない評価をされてきた末に迎えたオリンピックで、ミスからもうメダルの可能性がなくなったとき、ルールにとらわれず、自分を表現しようとした。自分らしくあろうとした。それは言えるのではないか。
オリンピックという大舞台で自分を貫く姿勢を示したのが、あの禁止技の敢行だった。