オリンピックへの道BACK NUMBER
長野五輪で禁止技「後方宙返り」を披露…“女子フィギュア界の異端児”スルヤ・ボナリーを知っていますか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/02/07 17:00
長野五輪で禁止技「後方宙返り」を披露したスルヤ・ボナリー
ただ、オリンピックでは表彰台に上がれなかった。1992年アルベールビル、1994年リレハンメルともにミスが出て5位、4位という成績にとどまっている。
そんな中で迎えたのが3度目のオリンピック、長野五輪という舞台だった。
「審判よりも観客にスケートを楽しんでほしい」
ショートプログラムを6位で終えたボナリーは、フリーではジャンプの転倒や回転不足、両足着氷などミスが相次いだ。
ADVERTISEMENT
そして、フリーの演技も終盤にさしかかる頃。ボナリーは突然勢いよく左足で踏み切った。体は後方へと回転。禁止技「後方宙返り」を披露したのだった。
観客席からは歓声と喝采が聞こえた。ただ、ルール違反はルール違反だ。10位という結果で終えた。
演技を終えたあと、こう語ったという。
「勝てないことは分かっていたので、やれることをやったんです」
たしかにそれまでのミスを考えれば、メダル圏内の上位進出は望めなかっただろう。ただ、次の言葉は、チャレンジした意味合いの深さを思わせる。
「審判よりも観客にスケートを楽しんでほしいと思っていました」
演技と採点とのギャップに苦しんできた
ショートプログラムでは、上位の中でただ一人、3回転-3回転の連続ジャンプを組み込むなどプログラムの難度は高かった。それでも転倒のような失敗はなかったのに6位だったことに、「もう慣れています」と語っている。
ボナリーは自身の演技と採点とのギャップに苦しんできた。