箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
《箱根駅伝》駒澤・青学・東洋の“学生記者”が熱弁する、選手たちの“知られざる素顔”とは?「“優勝”の勝ち記事が書きたいです!」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byNanae Suzuki/Yuki Suenaga
posted2022/01/01 17:05
左から、花尾恭輔(駒澤)、近藤幸太郎(青学)、石田洸介(東洋)
スーパールーキー石田洸介が“よく使うフレーズ”は…?
苦肉の策のアンケート取材は、意外にも選手の人柄や個性を知るツールになっているそうだ。例えば、今季注目ルーキーの石田洸介(1年)がよく使うのは「鉄紺の伝統を守る」というフレーズ。箱根前のアンケートには、「チーム一丸となって鉄紺の強さを証明します」と、力強い一言が記されていたという。
水越さんの注目選手は、九嶋恵舜(2年)。前回に続き、6区にエントリーされている。前回は区間14位と落ち込んだが、リベンジに燃えているに違いない。
「今季は出雲、全日本でも継続して安定した走りを見せてくれました。去年の経験が生きれば、チームの柱となる走りができるんじゃないのかなと期待しています」
東洋大と東京国際大の“学生ならでは”の因縁とは?
8年ぶりの総合優勝に向け、ライバル校として一番意識するのは駒大か、青学大か……。水越さんから返ってきたのは、意外な“あるつながり”の大学だった。
「東京国際大ですね。出雲や全日本の勢いもすごかったですし、留学生を抜きにしてもチームの水準が上がっていると感じています。あと、東京国際大のキャンパスって、東洋大の練習拠点がある鶴ケ島駅の隣なんですよ。東武東上線沿いに『東京国際大、箱根出場おめでとう』って張り出されてるのを見ると、『東洋も応援して!』って思っちゃいますね(笑)」
東洋大の練習場がある東武東上線・鶴ケ島駅と、東京国際大のキャンパスの最寄り駅・霞ケ関駅は、電車で3分の距離。「東武東上線ユーザー」同士の戦いにも注目だ。
「往路から優勝にこだわって正々堂々と戦うのが、昔から続く東洋のこだわりの戦法です。往路の選手がミスなく本領を発揮し、復路は総合力で粘れるか。前半の攻め、後半の守りがキーになると思います」
新聞発行を禁止された大学も…学生記者たちの闘い
◆◆◆
各校の魅力を熱く語ってくれた学生記者たちだが、コロナ禍で現地取材はほとんど許されない苦しい2年間を過ごしてきた。新聞部といえど「サークル」のため、一般のメディアと同じような取材許可はおりず、中には新聞発行すら禁止された大学もあったという。
昨季に続き、今季も出雲、全日本、そして箱根と現地取材に入ることはできない。披露してくれたエピソードの数々は、わずかに与えられた取材で得たものばかりだ。
駒スポの黒岩さんは「来年度も三大駅伝の取材ができないと、駅伝取材の経験者が0になってしまいます。現地での取材ノウハウを受け継ぐことができなくなるのは怖いですね……」と、率直な心境を吐露する。
ライバル校の新聞部同士も火花を散らしているのかと思いきや、学生記者同士は仲がいいそうだ。昨年の12月25日にはEKIDEN Newsが企画した号外配布会で、関東9校がそろった。
「各大学のスポーツ新聞会同士で協力して、大会運営側に取材許可の要請を出すなど、お互いの苦労はすごく分かります……。むしろ、コロナ禍で他大学陸上班同士のつながりは強くなったと思います」(黒岩さん)
大手町での号外配布は学生記者の年に一度の晴れ舞台であり、箱根駅伝の風物詩だったはず。
来シーズンこそは、学生記者が箱根路に繰り出し、レース後の大手町を活気づけてほしい。