サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「個人のミスは仕方ない。でも…」日本代表GK権田修一32歳はなぜ“選手同士での話し合い”をとことん続けるのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2021/12/26 11:02
10月12日のオーストラリア戦、GK権田を中心にオウンゴールで得た1点のリードを守り切った
マインドとしてずっと抱いてきたことではある。ただ完全に自分の“軸”となった。清水エスパルスを率いたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督からの「個人のミスは仕方ない。でも戦術的な守備のミスを減らそう」という教えとも重なっていた。
戦術的なミスを減らしていくために選手同士で話し合って確認するのはエスパルスでも代表でもやってきたこと。うまくいっても、また次の課題が出てくる。あきらめたら終わり。あきらめないからチームの積み上げになる。権田はそう信じてやってきた。
11月のベトナム、オマーンとのアウェー2連戦をクリーンシートで乗り切った。ベトナム戦の前には欧州組の11人が直前合流となってしまったが、権田に不安はなかった。オーストラリア戦後の共有と確認があったからだ。
「逃げると課題の本質が分からなくなる」
「チームも代表も(結果が出なくて)うまくいってないなと思った時期はありました。でもそこを向き合わずに逃げちゃうと、課題の本質が分からなくなってしまう。うまくいっていないんだったら、それを受け入れたうえで自分ができることって一体何だろうかと考えました。“絶対に失点しないぞ”と意気込むのは違う。いつものように当たり前にプレーすることが大事だな、と。(うまくいってないと思うことを)受け入れながらも、それを周りに見えないようにしました。見せない、じゃなくて、見えない。受け入れるからそれができました」
エスパルスは残留争いに巻き込まれ、日本代表はアジア最終予選でオマーン、サウジアラビアに敗れた。
それでも権田はゴールマウスの前に毅然として立ち続け、チームでは残留を決め、最終予選もワールドカップ自動出場圏内の2位に浮上した。
失点しても、敗れても、絶対のリカバリーが彼にはある。自分がやらなきゃと「いらんことをした」FC東京戦の後は同じ現象を起こしていない。自分を見つめ、チームを見つめ、チームメイトを信じ、自分を信じ、前に向かおうとしたからこそ苦難を糧にすることができた。