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「自分がいらんことをした」エスパルス主将・権田修一が明かす、残留争いのなか当たってしまった“嫌な予感”
posted2021/12/26 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
権田修一の声は、震えていた。
寒風吹きすさぶ最終節、12月4日のIAIスタジアム日本平。清水エスパルスはセレッソ大阪から逆転で勝利をつかんでJ1残留を決め、彼はキャプテンとしてサポーターへの挨拶の場に立った。
声が震えたのは寒いからではない。熱いものがこみ上げたからだ。
「ここで特定の選手の名前を挙げるのはあまり良くないかもしれないと思うのですが……。今年1年間、同じGKで試合に出られなくても毎日クラブハウスに一番早く来て準備している大久保(択生)選手。彼が毎日熱い姿勢で練習していたおかげで自分の体がしんどくても、彼の顔を見ていると絶対に頑張らなきゃって思わせてもらいました」
今シーズン出場機会のなかった同僚GKの名前を皮切りに、ノリエガ・エリック、立田悠悟、宮本航汰の名を口にした。本当はもっと多くの選手を出したかったに違いない。
「ちょっと感情的になってしまいました」
「普段、三保のトレーニングで頑張っている選手たちが、たくさんいます。その選手たちに今年一番の拍手を送ってあげてください!」
スタジアムに響く権田の声を合図に、シーズン一番の拍手が日本平に降り注がれた。サポーターの心を震わせたスピーチとなった。
「あの場に立ったときに、いろんなことを思い出しました。今年、しんどかったなとか、みんな頑張ったなとか。そこで大久保選手の顔がパッと浮かんできて。バレないくらいでちょっと感情的になってしまいました」
いやいや、バレてます。
普段、プレーにおいては感情を見せない人が、秘めた思いを抑えられなかった。エスパルスにとってこの1シーズンがどれほど激動だったかを物語るワンシーンでもあった。
権田が語る、12・4──。