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「個人のミスは仕方ない。でも…」日本代表GK権田修一32歳はなぜ“選手同士での話し合い”をとことん続けるのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2021/12/26 11:02
10月12日のオーストラリア戦、GK権田を中心にオウンゴールで得た1点のリードを守り切った
前半41分、吉田麻也が高い位置を取った長友へサイドチェンジのパスを送り、それを奪われると後手に回ってボールをつながれてタガートに決定的なシュートを打たれている。課題として次の試合に持ち越してはいけないポイントだと共有し、まずは当事者たちで話し合いを持っただけでも随分とクリアになったという。
一方でこのシーンは権田のビッグセーブが光っている。ニアに飛んできた強烈なシュートを左手で弾き、それがポストに当たった。
自分のプレーを誇って然るべきなのに、彼はそうしない。「チームで防ぎましたから」と譲らない。
森保監督「ミスはある。だからミスのその次を守ろう」
「あのとき吉田選手は1対2の状況でした。遅れていてもあきらめずに何とかシュートを防ごうと滑ってくれた。それに彼だけが反応しているわけじゃない。みんなが反応して戻ってきた。誰もあきらめてなかった。誰かがあきらめていたらきっとやられています」
追撃のシュートも遠藤航がブロックし、権田がポジションに戻るまで酒井宏樹がゴール前に立ちはだかる。攻撃陣も戻ってゴール前を固め、最終的には外から成功確率の低いシュートを打たせた。崩されたことは課題だったとしても、あの危機を乗り切ったのは決してラッキーなどではなかった。全員の魂が、あの左手のビッグセーブには宿っていた。
彼は言う。
「森保(一)監督からは普段からずっと言われています。“ミスはある。だからミスのその次を守ろう”と。マイボールのとき、ビルドアップでミスが起こったり、長いボールを奪われたり、いろんなことがある。すぐに切り替えて、そこで防げば問題ない。あの場面は危なかったですけど、みんなに“次を守る”意識があったから防げたのだと思います」