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「えっ!《ボランチ=舵取りが語源》って間違いなの?」 日本でほぼ無名な「名MFカルロス・ボランチ」の革命的功績とは

posted2021/12/20 17:00

 
「えっ!《ボランチ=舵取りが語源》って間違いなの?」 日本でほぼ無名な「名MFカルロス・ボランチ」の革命的功績とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2007年アジア杯の(左から)鈴木啓太、中村憲剛、遠藤保仁。タイプの違うボランチとして輝いたが、その「ボランチ」の語源を探ってみると……

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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Takuya Sugiyama

日本のサッカー用語でおなじみのフレーズ「ボランチ」。その語源について考察していくと、面白い背景が見えてきた(全3回/#2#3

「ボランチとは、ポルトガル語で舵取り、ハンドルを意味する。ブラジルでは、中盤の深い位置から攻守両面でチームを操る選手のことをボランチと呼ぶ……」

 このような記述を、日本のフットボール関連の本、雑誌、記事などで目にした人が多いのではないか。

 ググってみると、同様の記述がこれでもか、これでもかと出てくる。「今さら聞けない……サッカー用語ボランチとは……」などと「コアなファンにとっては常識」と言わんばかりのものまである。

 よくできた説明だ。ボランチというポジションの役割とその魅力を、的確に説明している。日本の多くの子供たちに、「僕もボランチをやりたい」と思わせてきたかもしれない。

 しかし、見事な説明だからといって、それが常に正しいとは限らない――。

「Volante」

 名詞と形容詞があるが、手元のポルトガル語-日本語辞書には、名詞であれば「ハンドル、舵、操舵装置、操舵輪、シャトル」、形容詞であれば「飛べる、浮動する、移動する、束の間の」などと書いてある。「ボランチがポルトガル語で舵取り、ハンドルを意味する」というのは正しい。

 問題は、ここからだ。

1940年代に”Volante”という名の選手が存在していた

 数年前、Jonathan Wilsonという英国人フットボール・ライターが書いた「Inverting the Pyramid : The History of Football Tactics(ピラミッドをひっくり返す:フットボール戦術の歴史)」という本を読んでいた。

 すると「1941年のフラメンゴの右ハーフにVolanteという選手がおり、左ハーフのジャイメよりも深い位置でプレーしていた。以後、ブラジルでは守備的MFのことをvolanteと呼ぶ」という記述があり、驚いた(P110~111)。そんな話は、聞いたことがなかったからだ。

©Hiroaki Sawada

 1930~40年代のブラジルにおける一般的なフォーメーションは「WMシステム(攻撃陣がWで、守備陣がMの形。数字で表現すると、3-2-3-2)」だったが、3列目の「2」が並行ではなく、右のVolanteの方が下がり目だった、というのである。

 この本では、選手Volanteについてそれ以上の説明はなかった。そこで「Almanaque do Flamengo」(フラメンゴ年鑑)を引っ張り出した。

【次ページ】 確かに守備的MFとしてプレーしていたようだ

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