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ブラジルの超大物監督も「ボランチの語源」を知らなかった!《なぜ日本で「ボランチ=舵取り」説が広まったか》
posted2021/12/20 17:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
ボランチの語源に関する間違った説が、なぜ日本で(そして、実は世界中でほぼ日本でだけ)、かくも広く流布したのか――。この疑問を解き明かすための一助として、僕は自分のフェイスブック友達(ほとんどが日本人で、フットボールにかなり詳しい人が多い)、そしてブラジル在住のブラジル人と日本人の知人、友人、フットボール関係者に以下のような緊急アンケートを試みた。
<質問>
ブラジルで守備的MFのことをvolante(ボランチ。より正確な日本語の発音表記はヴォランチ)と呼びますが、それはなぜでしょうか?
<答え>
(1)昔、そういう名前の選手がいたから
(2)ポルトガル語でvolanteは舵取り、ハンドルの意味。攻守両面でチームの舵取りをすべきポジションだから
この結果は、なかなか驚くべきものだった。
<日本人>
(1)約10%(このうち、名前まで知っていたのは5%)、(2)約90%。全員がどちらかを回答した。
<ブラジル人>
(1)約30%(ほぼ全員、名前まで知っていた)、(2)約50%、(3)わからない=約20%
(2)と答えた人の中には元超大物監督も
日本人の場合、名前まで知っていたのは約5%だけで、ほとんどがメディア関係者だった。(1)と答えた人の半分(全体の約5%)は特に根拠がなかった。
(2)と答えた人は監督、コーチ、選手、クラブスタッフ、記者、カメラマンらフットボール関係者と一般のファン。「テレビ(試合の実況中継やスポーツ番組)、書籍、雑誌、記事、漫画などで知った」というのがその根拠で、自信たっぷりの人が多かった。
事実、僕が知っているだけでも数冊の本で(2)の説を紹介している。いずれも、著者はかなりのベテラン。これに雑誌、新聞の記事を加えると、莫大な数にのぼるのではないか。
「プロクラブ(Jリーグ屈指の強豪)の新入選手紹介の席で、クラブ関係者がボランチの役割を表現する言葉として使っていた」という証言もあった。さらに「こんなわかりきったことを聞いて、沢田さん、大丈夫ですか」と心配してくれる人までいた。
また、ごく少数だが「両方の説がある」と言う人もいた。