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[ダークホース徹底解剖]創価大学「“エース不在”は最高の褒め言葉」
posted2021/12/17 07:00
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph by
Kiichi Matsumoto
スーパーエースと呼べるような選手がいなくても、前回はあと一歩で総合優勝というところまで迫った。大砲なきチームの破壊力の源は一体どこにあるのか。
総合優勝まであと2kmだった。しかし、10区のアンカー・小野寺勇樹が駒大に抜かれて力尽きた。千載一遇のチャンスを逃した。周りから見ればそうだろう。しかし、寮で観戦していた往路メンバーを含む部員たちは、小野寺のゴールの瞬間に大喜びしていた。拍手を送る彼らの顔には、悔しさではなく笑顔が浮かんでいた。
前回の第97回大会、観ているすべての人を驚かせたのが創価大だった。前年9位になって初のシード権を獲得したばかりの新興勢力が、青学大や駒大を向こうに回して往路優勝を果たし、10区の途中までレースの主役になったのだ。
前評判も高くなく、注目されるエースもいない中での快走。前々回は10区で13年ぶりの区間新を出してシード権獲得に貢献し、前回も4区で先頭に立った嶋津雄大はこう話す。
「エースがいないと言われるのは、逆に嬉しいかもしれませんね。みんながエースというか頑張っているということだから」
前々回の嶋津はナイキの厚底シューズ以外を履いた唯一の区間賞獲得者だった。目の病気を抱えている背景などもあり、一躍脚光を浴びた。突然の注目やさまざまな要因が絡まって、精神的に参って休学した時期もあった。
「でも前回は違いました。たまたま僕が先頭に立っただけで、みんなが区間ひと桁でつないでくれた。おかげで取材も分散しました。みんなで勝ち取った準優勝だったから嬉しかったし、それが一番正しいチームのあり方かなと思いました」