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「箱根駅伝→世界で戦うにはどんな練習が必要?」“現役引退”大迫傑30歳が駒大“最強ランナー”田澤廉21歳に初対面でアドバイスした中身
posted2021/12/16 17:02
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Asami Enomoto
「田澤君が『モヤモヤしている』って何回か言ってたじゃないですか? それって凄く大切だなって。陸上選手として、モヤモヤを感じるのもひとつのセンスなんです」
約70分の対談の最後に、大迫傑(30歳)はこんなことを語り始めた。
「(練習内容や出場するレースの位置づけを)監督や周囲に決められ、それをすべて受け入れるのか、自分が本当にやりたいこととの矛盾、つまりモヤモヤの原因を探っていくのか。それを感覚的に探れる選手って、当たり前のようで、あんまりいないんですよ」
発売中のNumber「箱根駅伝 エースにつなげ!」の巻頭では、東京五輪で現役を引退した大迫と、駒澤大学の絶対エースである田澤廉(3年・21歳)の対談を掲載している。
2人は初対面。大迫に最初に挨拶をする時、田澤はどうにもソワソワして、笑顔をつくろうにも顔がこわばってしまう。それを大迫はヘアメイクのセットを受けながらも「よろしくお願いします」と真摯に、余裕を持って受け止めていた。
大迫の控室を出た後、物怖じしないタイプであるはずの駒大キャプテンに、そんなに緊張するのは珍しいんじゃないですか?と尋ねると、「大迫さんは日本のトップで、メディアで見て、ずっと憧れてきましたから」という答えが返ってきた。
学生長距離界のトップランナーの振舞いに、理解していたつもりだったが、改めて「大迫傑」というランナーの存在感と影響力を認識させられた。
田澤の格好を見て大迫も「いいじゃん」
だが、撮影や対談になると雰囲気は和んでいく。
当初、大迫は私服、田澤はジャージで撮影をする予定だったが、田澤の私服が予想以上におしゃれだったために(失礼しました)、2人とも洋服で撮影することになった。
田澤の格好を見た大迫も「いいじゃん」と一言。田澤は「1年前ぐらいから、こういう服もいいかなって思い始めて。それで買うようになりました」と照れくさそうに教えてくれた。
対談の内容は、以下の項目を含めて多岐に渡った。
●大迫が箱根駅伝を自分の中で「完結」させたのはいつなのか?
●田澤が本当は「やってみたい」という陸上選手としての挑戦は?
●大迫が「将来のアドバンテージになる」と評した、田澤の来季のトレーニング計画とは?
そして今回の対談の鍵になった言葉が、冒頭に大迫のコメントとして紹介した、田澤の「モヤモヤ」だった。
大迫「僕も大学生の時って、モヤッとしていた」
田澤も様々なテーマに対して、はっきり自分の意見を言葉にしてくれ、それは時にとても力強かった。だが、いくつか抽象的な質問ややりとりの中では、「自分はうまく言えないんですけど」とまだ意見を整理中ですという答えが返ってきた。