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第3の球種を消さず。中村のリードの妙。
第2戦 オリックス 0-2 ヤクルト
posted2021/12/02 07:01
text by
星野伸之Nobuyuki Hoshino
photograph by
Naoya Sanuki
前夜はサヨナラ負けを喫し、リードはわずか2点。レギュラーシーズンでも7回が最長という高橋奎二をリスク覚悟で9回のマウンドに送り出した高津臣吾監督は、大きな賭けに勝ったといえます。
高橋は5回まで毎回安打を許し苦しんでいましたが、6回からは無安打とギアを一段上げた投球を見せて大舞台で初の完封勝利。鍵となったのは「カーブ」です。
立ち上がりからストレートには抜群のキレがありましたが、変化球で使える球はチェンジアップだけ。カーブは曲がりは大きいものの、ひっかけ気味でストライクが入らない状態でした。ストレートとチェンジアップの組み合わせを通せば、捕まるのは時間の問題。捕手の中村悠平はそこでカーブを消さずに、上手く整えさせました。
余分な力が抜けてバランスが良くなった中盤からはカーブが入り出し、6回には吉田正尚を空振り三振、杉本裕太郎をサードゴロに仕留めた勝負球になっていました。8回は粘られて22球を要しましたが、直球は150kmをマークするなど力があり、カーブとの緩急が9回を投げ切るうえで効果的だったと思います。
初戦のヒーロー、吉田正を完璧に抑えたのも大きかった。第1打席の初球でインコースを詰まらせ、嫌なイメージを植え付けたことがその後の3打席の攻略にもつながりました。前日30球以上投げた清水昇と、サヨナラ負けのマクガフという勝ちパターンの2枚が使えないことを分かったうえで、高橋にできるだけ長く投げさせる工夫を凝らした中村のリードも流石でした。