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[第2戦 KEYMAN]青木宣親「39歳、約束の職人芸」
posted2021/12/02 07:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyam
巡ってきたチャンスを逃すつもりはなかった。
8回2死一、二塁。オリックス先発の宮城大弥に5回までは一人の走者も出せずに完璧に抑え込まれた。その左腕からようやくつかんだ先制のチャンスに39歳のベテラン・青木宣親の頭はクリアだった。
「甘いところをずっと待っていた。(宮城は)本当にいい投手。『やっときた』という感じでした」
内角に甘く入ったストレート。詰まったが、そこから最後は左手で押し込み外野まで運んだのが職人のテクニックだった。
先制のタイムリー安打は、好投してきた先発の高橋奎二の背中を完封へと押して、チームに待望のシリーズ1勝をもたらす一打でもあった。
自身初の日本シリーズだが、ポストシーズンの難しさは、メジャーで経験してきた。2014年のワールドシリーズ。カンザスシティ・ロイヤルズの一員として162試合のペナントレースを戦い抜き、そこからさらに激しいポストシーズンを勝ち抜いて辿り着いた世界一の戦いの場。しかしそこには苦い思い出しか残っていない。
1、2戦とノーヒットに終わり第3戦では先発を外れた。肉体的に限界を迎えて風邪をひいてコンディションも最悪だった。第6戦で初安打を放ったが、先発した第7戦に敗れてチームは3勝4敗で世界一に届かなかった。短期決戦でコンディションを作り上げる難しさ、強いメンタルを持つことの大切さ。すべてはそこで学んでいる。
だから2018年のヤクルト復帰で、まずナインに伝えたのが、心の強さだった。