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ユナイテッドの新監督は誰に? DNAか、哲学か、超実力主義か……スールシャール解任で考える監督交代の難しさ
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/25 17:01
スールシャールの解任を受け、後任人事が注目されるユナイテッド。再建を託せる人材を見出すことができるだろうか
2003年7月にチェルシーを買収して以降、アブラモビッチは16回も監督を代えていた。
クラウディオ・ラニエリ→モウリーニョ→アブラム・グラント→ルイス・フェリペ・スコラーリ→レイ・ウィルキンス(暫定)→フース・ヒディンク(暫定)→カルロ・アンチェロッティ→アンドレ・ビラス・ボアス→ロベルト・ディマッテオ→ラファエル・ベニテス(暫定)→モウリーニョ→スティーブ・ホランド(暫定)→ヒディンク(暫定)→アントニオ・コンテ→マウリツィオ・サッリ→フランク・ランパード→トーマス・トゥヘル……。
好き嫌いは別にして、これがアブラモビッチのやり方だ。サポーター間で不人気だったサッリを解任し、レジェンドのランパードを起用する。CL出場権を掴んだ1シーズン目は我慢したが、大型補強がなかなか実を結ばない2シーズン目途中で経験豊かなトゥヘルに挿げ替える。
トゥヘルの長期政権もありえない
やっていることは滅茶苦茶だ。人選に一貫性がない。
しかし、トゥヘルは類稀なコミュニケーション能力で選手のハートをつかみ、チーム内のムードはすこぶる良い。イングランド国内の3タイトルとCLを合わせた4冠獲得も可能なほど、現在のチェルシーは充実している。
また、スコラーリ、ビラス・ボアスなどを除くと、大半の監督はチェルシーになんらかのタイトルをもたらしてきた。無冠に終わったグラントも、CL決勝までは導いている。
こうした事実があるからこそ、アブラモビッチは無慈悲なまでに監督の首をはねるのだ。トゥヘルの長期政権もありえない。
クラブのDNAを重視するか、監督の哲学にすべてを委ねるのか、あるいはチェルシーのような超実力主義か。人それぞれに意見がある。伝統や歴史を軽視するとサポーターの反感を買い、現役時代の実績を過剰に意識するOBの無遠慮すぎるコメントが、新体制の出鼻を挫くケースは何度もあった。
日本の野球界では“ビッグボス” 新庄剛志が日本ハムファイターズの監督に就任した。コーチ経験すらない彼は指揮官としてふさわしいのか。2シーズン連続でパ・リーグ5位なのだから、監督として実績がある者を起用すべきとの指摘は真っ当なのか。むしろドラスティックな改革が必要なのか。
洋の東西を問わず、後任の人選、バトンタッチのタイミングは難しい。