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総額662億円の投資も活かせずマンU監督を解任に……無冠に終わったスールシャールの迷走と失望の3年間
posted2021/11/25 17:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
11月21日、マンチェスター・ユナイテッドはオーレ・グンナー・スールシャール監督の退任を公表した。レジェンドに対する気遣いなのか、公式サイトは「解任」という表現を用いていない。
10月末にリバプールに0-5と完膚なきまでに叩きのめされた後も、マンチェスター・シティに0-2というスコア以上に圧倒的な実力差を見せつけられた11月頭の段階でも、ユナイテッドは監督解任を考えていなかった。
ユニホームの売り上げが好調で、SNSのフォロワー数もうなぎ登り。ビジネス面に不安がなく、むしろ上向いているのだからそれでよし。オーナーのジョエル・グレイザーをはじめとする上層部は、現場の混乱に無関心だった。
しかし、第12節の相手はワトフォードだった。
リバプールでもシティでも、チェルシーでもない。降格候補にすら挙げられるクラブに1-4の惨敗。その翌日、スールシャールは去っていった。
解任以外のなにものでもない。
バラバラになりかけていた組織を瞬く間に修復
2018年12月19日、スールシャールが暫定監督に就任するとユナイテッドは笑顔を取り戻した。前任ジョゼ・モウリーニョのパワーハラスメント、古すぎる戦術的アプローチに疲弊していたロッカールームを、スールシャールは活気づけた。
選手たちと距離を置かず積極的に話しかけ、バラバラになりかけていた組織を瞬く間に修復した。
「いつも笑顔で接してくれる。話の分かる人だね」(ポール・ポグバ)
「相談に乗ってくれるし、周りに気を遣える人だと思う」(ルーク・ショー)
モウリーニョに名指しで批判されていた選手たちはとくに、スールシャール体制発足を歓迎していた。
その甲斐あって、12月23日のカーディフ戦から公式戦8勝2分。ポグバの絶好調時とも重なり、監督交代のタイミングは間違っていなかったと思われた。
モルデやカーディフで監督を務めたものの確かな実績がなく、リバプールのユルゲン・クロップやシティのジョゼップ・グアルディオラと伍する経験にも乏しかったが、斜陽のユナイテッドに“晴れ間”をもたらしたのは紛れもなくスールシャールの明るさだった。