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「おまえよりいい女と付き合うから別れるぜ」こっぴどくフラれた名将たちとインテル、ユーべのリベンジマッチが熱かった!
posted2021/11/27 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ユーベに復帰したリッピの見事な意趣返し
名将マルチェロ・リッピは通算5回のスクデット歴を誇るが、その中でも「格別だった」と言い切るタイトルがある。ユベントスを率いた2001-02シーズンに最終節でインテルを追い抜いた逆転優勝だ。
1999年に一度ユーベの監督職を降りた彼は、すぐさま宿敵インテルから三顧の礼で迎え入れられた。しかし、ロベルト・バッジョを筆頭とする当時の主力選手たちと打ち解けることはなく、インテリスタたちからも心底嫌われた。
2年目を迎えた2000年の秋、バラバラのチームが開幕戦で格下レッジーナによもやの黒星を喫すると、経営陣はあっさり指揮官のクビを切った。
“裏切られた”という怨恨を抱えたリッピは、翌年すぐユーベに復帰。逆転スクデットでインテル相手に見事意趣返しを果たした、というわけだ。
カルチョの世界では、苦い別れ方をした古巣との対戦をこっぴどくフラれた元恋人への仕返しに喩えることがある。クラブと指導者との結びつきを色恋沙汰になぞらえるのは、いかにもイタリアらしい。
11月20、21日に行われた今シーズンのセリエA第13節でも、「インテル×ナポリ」と「ラツィオ×ユベントス」という遺恨試合が2試合組まれた。
インテルはスパレッティを容赦なくクビに
愛憎渦巻く注目カードの主役は、首位ナポリを率いるルチアーノ・スパレッティと無頼の親分マウリツィオ・サッリという曲者指導者2人だった。
2年の休養期間を経て今季から現場復帰したスパレッティが、2017年から2シーズン、インテルを指揮していたことは記憶に新しい。
絶対王者ユベントスによる9連覇を横目に見つつ、智将はクラブに当時7年ぶりとなるチャンピオンズリーグ出場権をもたらした。翌シーズンも、苦しみながら最終的に見事CL出場権を獲得。経営陣から与えられた予算と人員編成で経営目標を達成したのだから、感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはどこにもないはずだった。
しかし、スクデット3連覇やプレミアリーグ制覇の実績を持つ闘将アントニオ・コンテ招聘の目星をつけた張会長ら経営陣は、2018-19シーズンの終了とともにスパレッティを容赦なくクビにした。
少々乱暴な言い方をすると、“おまえよりいい女と付き合うから別れるぜ、あばよ”と切り捨てたのだ。