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ユナイテッドの新監督は誰に? DNAか、哲学か、超実力主義か……スールシャール解任で考える監督交代の難しさ
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/25 17:01
スールシャールの解任を受け、後任人事が注目されるユナイテッド。再建を託せる人材を見出すことができるだろうか
当然、上層部は後任の人選に慎重になり、実績、知名度とも十分な監督経験者に長らくアプローチはしていた。
しかし、ファーガソン退任後の13年、当時フリーだったグアルディオラはバイエルン・ミュンヘンに先を越された。レアル・マドリーの監督を務めていたジョゼ・モウリーニョは、モラルを欠いた言動がボビー・チャールトンをはじめとする一部の役員に嫌われて、ファーガソンの推薦も水泡に帰した経緯がある。
そして行きついた先が、なぜかエバートンのデイビッド・モイーズ監督(当時)だった。彼とファーガソンの共通点はただ1つ、スコットランド人であること。なんとも奇妙な人選だった。ちなみに役員会はライアン・ギグスをプッシュしていた。彼がモラルを欠く人間であるのは、その後の不倫発覚(しかも複数件!)で明らかなのだが……。
アーセナルもベンゲル体制以降に苦しむ
アーセナルも、22年間に及んだアーセン・ベンゲル体制の後で苦しんでいる。2003-04シーズンのリーグ無敗優勝、19年連続チャンピオンズリーグ出場権獲得など、ベンゲルを語らずしてアーセナルを語るなかれ、といって差し支えない業績だ。
ウナイ・エメリは前任者の影に怯えたのではないだろうか。「ベンゲルのような監督になりたい」と公言して憚らないミケル・アルテタ現監督も、現実と理想の狭間で、もがき苦しんできた。
ユナイテッド、アーセナルともに、前任者の任期が20年以上というのは長すぎだろう。チームにファーガソン、ベンゲルの色がつき過ぎているため、モイーズやエメリくらいのキャリアでは塗り替えられない。
ユナイテッドに至ってはモイーズ、ルイス・ファンハール、モウリーニョと外部人選で立て続けに失敗したことで、現役当時にファーガソンの薫陶を受けたオーレ・グンナー・スールシャールを監督に据えたが、なにひとつ答えを出せないまま解任に至った。
アブラモビッチは16回も監督を代えた
シティとリバプールにとって、ユナイテッドとアーセナルは格好の反省材料だ。
グアルディオラもクロップも退任する日が遠くない未来にやって来る。いまから後任に唾をつけておいても早すぎるということはない。
監督の人選において、チェルシーは荒業を多用してきた。結果が伴わなければ、人気があっても躊躇なくクビ。オーナーのロマン・アブラモビッチ、役員のマリナ・グラノフスカヤと意見が衝突した場合も、容赦なく解雇する。
「監督というポストを軽く見すぎている」
「現場の責任者を短期間に代えるべきではない」
数多くの批判が巻き起こってきた。