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総額662億円の投資も活かせずマンU監督を解任に……無冠に終わったスールシャールの迷走と失望の3年間
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/25 17:00
ワトフォードに完敗を喫したマンチェスター・ユナイテッド。およそ3年に及んだスールシャール体制は終焉を迎えた
ポグバの不振とともに勢いは失速
ただ、好調を長く維持できなかった。
ポグバの不振とともに勢いが急速に薄れ、3月以降の公式戦は4勝2分8敗……。2018-19シーズンのユナイテッドはチャンピオンズリーグの出場権すら獲得できなかった。当然、スールシャールは批判の対象になる。
「明確なゲームプランがない」
「特定の選手に依存している」
そうした指摘は、その後のユナイテッドについてまわることになる。
2019-20シーズンは第8節までに3敗を喫し、続くリバプール戦で引き分けると14位にまで落ち込んだ。もちろん、ポグバの負傷(第5節から長期欠場)は痛かったが、スールシャールは打開策を見出せないままベンチでフリーズし、ときおりテクニカルエリアまで出ていっても、腕を組んで戦況を見守るだけだった。
冬の移籍市場で獲得したブルーノ・フェルナンデスの大活躍で3位になったとはいえ、チームの総合力は上向いていない。彼が疲弊した最終盤のクラブパフォーマンスは精彩を欠き、アーロン・ワン・ビサカやハリー・マグワイアといった補強も、目に見えた成果につながったわけではなかった。
戦略・戦術を確立できず、特定の個人に依存
昨シーズンも同様だ。最終的に2位に入ったものの、優勝したシティとは12ポイントもの大差である。リバプールに5ポイント差をつけたといっても、それは、マージーサイドの強豪がビルヒル・ファンダイクを右膝の十字靭帯断裂で失ったからだ。世界最高級のDFが健康体であれば、順位は逆転していたに違いない。
結局は18ゴール・12アシストのB・フェルナンデス、巧みなポジショニングと効果的なプレッシングで攻守のリズムを整えたエディンソン・カバーニに負うところが大きかった。スールシャールは例によって戦略・戦術を確立することができず、特定の個人に依存するフットボールから抜け出せなかった。
いや、抜け出そうとしなかった、といって差し支えない。
とにかく、なにもかもが場当たり的なのだ。対戦相手によってゲームプランを変更することはなく、判で押したように同じ顔ぶれが先発する。コンディションが低下していても、メンバーが変わらないのだ。