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「古田教室」と「主戦捕手が1人」でヤクルトがやや有利?…カギを握る<日本シリーズ全体を見通した配球力>とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/11/19 17:04
勝負の行方のカギを握るヤクルト中村悠平(左)とオリックス若月健矢
ヤクルト中村は古田教室では様々なことを学んだ
ヤクルトの中村は前回の15年のときにもマスクを被り優勝を経験しているが、その後は故障などもあり、頭打ちの時期が続いていた。しかし今春のキャンプで臨時コーチを務めたOBの古田敦也さんの指導で、一つ殻を打ち破って捕手として大きく成長。結果として投手陣の立て直しの陰の功労者と評されてもいる。
古田教室では様々なことを学んだが、中でもこれまでは投手への固定観念が強く、「この球は使えない。このシチュエーションではこのコースはダメ」と型に嵌めたリードになっていた。しかし今季はそうした固定観念を捨てて、改めて投手の潜在能力を引き出すことを意識。その結果、6年目の左腕・高橋奎二投手のブレークのきっかけを作り、2年目の奥川恭伸投手の一本立ちをサポートすることにも成功している。
そして何よりも短期決戦のシリーズで優位に立てるのが1人でマスクを被り、1戦から2戦、3戦とオリックス打線の残像を使った配球をできるということなのだ。要は投手という役者は変わっていくがシリーズを1つのつながった舞台として、配球の設計ができることになるということだ。
オリックスは捕手を投手とセットで起用
一方のオリックスの捕手の使い方は、投手とセットで起用するのが基本的なパターン。いうならば投手との呼吸を重視した起用ということになる。
そこでエースの山本由伸投手が先発するときには若月がセットでマスクを被り、田嶋大樹投手のときも若月が組むケースが多かった。また9月に右肘の手術をした山岡泰輔投手がシリーズでは選手登録をされて登板の可能性が出てきているが、その山岡とコンビを組んできたのも若月だった。一方で今季ブレークした宮城大弥投手や山崎福也投手は伏見とのセットになる。またシリーズで登板が予想される山崎颯一郎投手や竹安大知投手はシーズン中は伏見がマスクを被るケースがほとんどだった。