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「古田教室」と「主戦捕手が1人」でヤクルトがやや有利?…カギを握る<日本シリーズ全体を見通した配球力>とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/11/19 17:04
勝負の行方のカギを握るヤクルト中村悠平(左)とオリックス若月健矢
捕手出身の中嶋聡監督が手腕を発揮するか
ただこうした組み合わせの中で、鉄板のコンビは山本と若月くらいで、他の投手の場合は若月と伏見のコンディションや相手投手との兼ね合いも含めて臨機応援に変えてきている。その辺が捕手出身の中嶋聡監督の手腕の発揮のしどころでもある。
実際にロッテとのクライマックスシリーズ、ファイナルステージでは第1戦の山本が先発した試合では若月がマスクを被ったが、田嶋が先発した第2戦はシーズン中なら若月がコンビを組むケースが多かったが伏見が先発。そして山崎が投げた第3戦は若月とのセットだった。
シリーズを通してはチームリーダー的な存在でもある伏見が軸になると見られるが、その一方で第1戦は山本とセットで若月が先発マスクを被るのは確実。そこでオリックスの捕手陣の問題は、第1戦の山本が作る基本的な配球の枠組み、その残像をどれくらい2戦目以降にも継続して、ヤクルト打線を封じることができるかということになる。
もちろん今はスコアラーに加えてトラックマンなどを使った詳細なデータが集まり、相手打者を丸裸にできる土台はある。また第1戦でマスクを被った若月から伏見にも引き継ぎがあり、当然、そうした諸々のデータを土台に2戦目の配球を組み立てることになるだろう。
ヤクルトの中村の方が有利な環境にある
ただ、1球、1球、捕手が肌感覚で感じとる打者の反応や打席での仕草などをリードに反映させるには、1人の主戦捕手がマスクを被るヤクルトの中村の方が有利な環境にあるのは確かだ。ヤクルトの初戦先発が予想されるのは奥川となる。その奥川と組んだ中村が、まずは初戦を戦う中で肌感覚で集めたオリックス打線の感触をどう収集するか。その上でデータを加味して2戦、3戦へと繋げてどうトータルでシリーズを演出することができるか。そこが中村という主戦捕手を有するヤクルトの優位な点だ。
逆に言えばその肌感覚を完全には無理としても若月と伏見がどこまで共有できるかが、オリックスの捕手力のポイントとなる。中嶋監督が捕手出身で、そうした細かい目配りができるところはプラスに働くはずで、しかもオリックスには千賀に匹敵する山本という絶対的な投手を初戦に立てることができるというアドバンテージがある。
初戦を勝つだけではない。山本のピッチングを、どう2戦目以降のリードに繋げて他の投手のアドバンテージにすることができるか。その捕手間の連携がシリーズのカギを握ることになる。