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「古田教室」と「主戦捕手が1人」でヤクルトがやや有利?…カギを握る<日本シリーズ全体を見通した配球力>とは
posted2021/11/19 17:04
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
2019年からで2年連続で巨人との日本シリーズを制したソフトバンクの陰のMVPが、甲斐拓也捕手だったことに異論を唱える者はいないだろう。
いずれも初戦はエースの千賀滉大投手と組んで、綿密な巨人打線の分析のもとに、坂本勇人内野手や丸佳浩外野手、岡本和真内野手ら巨人の主軸打者を徹底して封じ込んでいった。その甲斐が20年のシリーズ終了後に語っていたのが、前年の19年の残像を使ったリードの有効性ということだった。
千賀と甲斐のバッテリーは19年のシリーズでは坂本を封じることで巨人打線の分断を図り、見事に成功している。このとき坂本対策として考えたのが、あえて得意とする内角を徹底的に意識させることだったという。
シリーズをトータルで俯瞰した配球
そのためにいきなり第1戦の第1打席からこれでもかというくらいにインコースを攻めた。この試合で坂本の意識を内角に向けさせて、2戦目以降で外への踏み込みを甘くさせることに成功したのだ。そして結果的には第1戦の配球を残像として使いながら、勝負どころでは踏み込みの甘くなった外の球で勝負して打ち取り、シリーズ4試合で1安打しか許さなかった。
もちろんこの配球が成功した背景には、内角球を得意としている坂本に対して、その内角に150km台の力のある真っ直ぐと落差の大きなフォークを正確に投げ込める千賀の力があったことは言うまでもない。と同時にその試合だけではなく2戦目以降も微妙に内角を意識させながら、要所では外の球を有効に使うというシリーズをトータルで俯瞰した配球を考えた甲斐という捕手の存在があった。
しかもこの話は19年だけで終わらないところがミソなのである。