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【J1残留争い】劇的勝利にキャプテン号泣、監督と愛弟子が歓喜の抱擁…湘南と清水はシビアすぎる「4チーム自動降格」を避けられるか
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/11/10 17:03
試合後に号泣する湘南DF石原広教(左)と、同点ゴールを決めて感情を爆発させる清水MF滝裕太(右)。残留争いという極限状況の重圧がよくわかる
そういった意味でも、10月23日の第33節、横浜FC戦での勝ち点3は湘南にとって大きかった。1-1の89分に、途中出場のMF山田直輝が劇的なゴール。試合後に山田が「一番苦しかったのは智さん(山口監督)だと思う」と語ったこの勝利によって、チーム全体を覆っていたモヤモヤが取り払われた。
キャプテンの1人でもあるDF石原広教は、10月1日の横浜F・マリノス戦とこの試合で、ホームゲームで2試合続けて失点に繋がる痛恨のプレーをしてしまった。最終ラインを務める石原が途中交代したことは今シーズンなかったが、山口監督は83分に彼をベンチに下げた。それだけ限界の状態だった。
自身がプレーできないピッチの中でチームメイトたちが奮闘し、勝利という結果によって救われた彼は、試合後ベンチから崩れ落ちて自力では立てないほど号泣し、それは場内を一周しても収まらなかった。「それだけ責任をもって、ギリギリのところでみんながやっている証拠」(山口監督)という石原の様子は、残留争いの厳しさを感じさせると同時に、これでチームの雰囲気が変わる、という確信を抱かせた。
結局「最後は気持ち」なのか?
清水の雰囲気も上向いている。平岡監督の初戦となった11月6日の札幌戦では、先制しながら逆転を許してしまったが、途中投入されたMF滝裕太が83分に同点ゴール。清水ユースで師弟関係だった2人が抱き合って喜びを分かち合う姿には、「やはり最後は戦術ではなく気持ちなのか」と思わせる説得力があった。
シーズン前に「残留争いするためにエスパルスへ来たわけではない」と語ったGK権田修一や、「自分自身が成長するために(清水への移籍を)選びました」という理由でシーズン途中に驚きの加入を果たしたMF松岡大起といった面々がチームを引き締めていながら、どうしても消極的な試合が続いてしまっていた清水。しかし長く育成年代を指導してきた平岡監督が指揮を執ることになったことで、生え抜きの選手たちが積極性や執念を見せるようになった。空回り気味のパスミスやロストもあったものの、最後に結果が伴ったことで「ゲームの流れとしては良くないと思う。それでも、2点目を取られてから追いつくメンタリティーや、3点目を取る意識は見えていたと思うので、それをプラスに捉えながらやっていきたい」(DF鈴木義宜)という状態で次に向かうことができる。
果たして、残留争いの見方として「気持ち」にフォーカスするのはどこまで正しいことなのだろうか。熾烈を極める今回の残留争いは、その是非も明らかにするかもしれない。
降格圏に3点差をつけて逃げる両チームは、どちらもポジティブな状態でラスト3試合を迎えようとしている。2021年のJ1は、どんな決着を迎えるのだろうか。
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