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【J1残留争い】劇的勝利にキャプテン号泣、監督と愛弟子が歓喜の抱擁…湘南と清水はシビアすぎる「4チーム自動降格」を避けられるか
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/11/10 17:03
試合後に号泣する湘南DF石原広教(左)と、同点ゴールを決めて感情を爆発させる清水MF滝裕太(右)。残留争いという極限状況の重圧がよくわかる
しかし勝ちきれない試合が多く、第27節終了後の8月31日に退任。今年から湘南のコーチに就任していた山口智氏を新監督としたチームは、リーグ戦初勝利までに6試合かかってしまい、8試合を終えて1勝4分3敗。シーズン通算6勝14敗15分で、15位に位置している。
清水は、昨シーズンのピーター・クラモフスキー監督による攻撃的なサッカーの追求から一転、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督を招聘し、リスク軽減を最優先する守備を取り入れて、「良い守備から良い攻撃へ」という地に足のついたサッカーを目指した。
誤解のないようにしておくと、ロティーナ監督は守備専門の人だと思われがちだが「練習のほとんどの時間は攻撃に費やします。攻撃の構築には時間がかかるからです。良い攻撃ができれば守備の時間が短くなります。それが一番良い守備だと認識しています」と語るように、攻撃と守備をシームレスに捉えて組織を構築していく監督だ。清水は2年連続でJ1最多失点。一からのチーム作りとなり、時間がかかることはサポーターも覚悟していた。
しかし、主力の離脱が相次いだチームは、学んだ戦術をピッチで表現することにどこか消極的だった。相手が勢いづくと「少し自信を失ったような印象を受けました」(第13節、横浜FC戦後のロティーナ監督のコメント)という状態になってしまい、耐えるだけで攻撃に転じられないまま失点を喫して追いつかれる、あるいは敗れる、という試合が目立った。失点は減少したものの、攻撃の時間が短くなってしまったことで得点も増えなかった。
残留争いに身を置くチームは、11月になってとうとう契約を解除。平岡宏章コーチが2年連続で終盤戦に緊急登板することになった。新体制最初の試合を引き分けたチームは、シーズン通算7勝16敗12分で16位となっている。
堅守の湘南が得失点差で優位に立つ
勝ちきれなかったことで監督の交代が行われた湘南と清水だが、引き分けで積み重ねてきた勝ち点1が、ここに来て大きな意味をもつようになった。
直近の試合でもそれぞれ勝ち点1を得た両チームは、降格圏との勝ち点差を3とした。特に湘南は、勝ち点で並ばれても問題ない状況を築き上げた。