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早稲田も東洋も失速「ウチらしくない走りだった」…全日本大学駅伝で“箱根有力校”は何を失敗したのか?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/11 17:01
どの大学にも“優勝のチャンス”があった全日本大学駅伝。優勝候補と言われながら有力校が大失速した理由とは
「スタートラインにチームのベストメンバーをしっかり準備できなかったところで、ハンディを背負っていました」(相楽)
優勝した駒澤大も鈴木芽吹(2年)、山野力(3年)といった主力を欠いており、他にもベストメンバーを組めなかったチームは多かったが、箱根駅伝の2区候補にも挙がる2人の欠場は早稲田にとって大きな痛手だった。
当初のプランでは、太田を前半区間に起用し、エース中谷雄飛(4年)を終盤の7区、8区のロング区間に配して、後半でも勝負を仕掛けるはずだった。
中谷が、3区を言い渡されたのは区間エントリー前日。
「7区、8区の準備をしていたので、3区の準備はほぼしていなかったのが正直なところです。スピード練習もやっていなかったので、不安がありました」(中谷)
その不安をよそに、中谷は4年連続の3区で区間4位(日本人2位)と快走し、チームを勢いづける役割をきっちりと果たした。
しかし、プラン通りにレースを進めることができたとはいえ、それは苦肉の策でしかなかったのかもしれない。優勝を狙うには、当初の予定通り、中谷を終盤に起用することが必須だった。
早稲田は結局、出雲に続き6位に終わったが、やはりあと1枚、2枚が足りなかった。
東国大の誤算「丹所を前半区間に起用できなかった」
出雲駅伝で圧勝した東京国際大は、「3位以内」を目標に掲げて全日本に挑んだ。
結果は、早稲田の1つ前の5位。
ライバル校が警戒する大エースのイェゴン・ヴィンセント(3年)は3区に起用された。出雲優勝の立役者となった丹所健(3年)は、出雲後に足底をケガし万全でなかったため、6区に回った(万全ではなくても、区間賞・区間新の激走だった)が、大志田秀次監督は前半型のオーダーを組んだ。
「ヴィンセントを3区に置き、スピードのある選手を前半に起用し、できるだけリードを作りながら、レースを進めた」(大志田)
全日本でも優勝を目指すのであれば、7区か8区にヴィンセントを回した方が大きなアドバンテージとなったはずだ。他校にとっても、そのほうが脅威に映ったはずだ。それなのに、あえてその策を取らなかったのは、箱根を見据えてのことだっただろう。出雲に続く二冠は逃したものの、それは指揮官にとって、想定の内だったのかもしれない。
箱根に向けて「ヴィンセントが作った貯金をいかに守るか」
実は出雲後に大志田監督はこんなことも話していた。
「全日本ではいろんなパターンを試したい。といっても、留学生を間の区間に使うか、終盤(7区か8区)に使うか、ですが……」