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CS直前、《主力も全員バント練習》だけではない…巨人と阪神の明暗を分けた、原監督と矢野監督の“ゲームプランニングの差”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/11/08 12:00
CS初戦の5回、見事に来日初の送りバントを決めたウィーラー
「あれを外すっていうことは何か根拠が……。
かなり高い確率でなければ外せないと思うんでね。こっちとしては対策していきます」
試合後の矢野監督はこうその場面を振り返った。
三塁コーチャーのサインを見破られていたのか、それともベンチから三塁コーチャーに送ったサインが筒抜けだったのか……。試合中に原監督は独特の勝負勘で「ここは1球外そう」と指示を出すケースがあるとも聞いたこともある。
なぜここでエンドランだったのか?
いずれにしてもこのワンプレーが初戦の流れを決めるポイントだったが、1つ、それ以前になぜここでエンドランだったのかということも疑問に思ったところだった。
「試合に向かうときには全ての準備を整えて、最後にどんな試合になるのかをシミュレーションする。そこでこうなったらこう動く、あるいはこう違う流れになったら、こう対処するとしっかり準備をする。ゲームプランをしっかり練ってグラウンドに立つのが自分のルーティンです」
原監督から以前にこんな話を聞いたことがある。
この第1戦のシミュレーションはどんなものだったのか? 巨人の先発はエースの菅野智之投手で、阪神の先発は9月25日の完封負けを含めて、巨人が2試合16回で1点も奪えていない左腕・高橋遥人投手である。おそらく多くて2、3点の勝負、場合によっては1点勝負にすらなる可能性を想定して、そういうゲームプランで臨んだ試合だったはずである。
ウィーラーに迷うことなく送りバントのサイン
だから采配も1点にこだわった。
案の定、立ち上がりから高橋の前になかなか走者を出せずに迎えた5回。先頭の丸が内野安打で出塁すると、続くゼラス・ウィーラー外野手に迷うことなく送りバントのサインを出したのだ。