格闘技PRESSBACK NUMBER
<RIZIN>“朝倉未来を落とした男”がさらに有利に? 金網に囲まれて戦う《ケージ》導入で格闘技界はどう変わるのか
posted2021/11/02 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Getty Images
今秋、RIZINが新シリーズ『RIZIN TRIGGER』の立ち上げを発表した。同シリーズは試合場としてケージを使用することから、にわかにリング・ケージ問題が噴出している。無理もない。これまでのナンバーシリーズでは、ずっとリングにこだわってきたという歴史があるからだ。
11月28日に神戸で開催のRIZIN第3のブランド『TRIGGER』でケージを導入する理由について、同プロモーションの榊原信行CEOは次のように語る。
「リングがアイデンティティであることに変わりはありません。しかし、世界のプロモーションを考えると、圧倒的にケージファイトが多いのは確か。僕らとしては新しいチャレンジのなかで、ファンの人たちにいろんな角度で楽しんでもらうために、ケージの中での試合もあってもいいだろうなと常々思っていました」
「人による闘鶏」の舞台だったケージ
ケージとは金網に囲まれた試合場を指す。そのルーツは93年にスタートしたUFCで、黎明期に大会プロデューサーを務めたホリオン・グレイシー(ヒクソンの兄)の友人で映画監督のジョン・ミリアス氏が考案したといわれている。UFC誕生以前からスクリーンの世界では地下格闘技のような大会に設置されたケージの中で闘い、時には死人すら出るB級作品があまた存在する。復讐劇がストーリーの骨子だった作品のなんと多かったことか! ケージは残虐性や暴力性を助長するアイテムだったのだ。
そういった映画のことを考えるたびに筆者は、生前のアンディ・フグが「むやみやたらと殴ったり蹴ったり、人を殺したりするのは格闘技の本質とはかけ離れている」と疑問を呈していたことを思い出す。旧K-1で一時代を築き上げたレジェンドは、バイオレンスと直結する格闘技映画に嫌悪感を抱いていた。
UFCの場合、スタート当初はオクタゴンによって暴力性や残虐性をクローズアップしていたことは否定できない。ベアナックルで殴り合い、金的もありというルールはストリートファイトの延長と見られても仕方なかった。それでも回を重ねるごとに、UFCはスポーツの方向にシフトチェンジしていく。「暴力的」「反社会的」ということを理由に、UFC反対のムーブメントの急先鋒に立ったジョン・マケイン上院議員は「人による闘鶏」とこき下ろした。UFCが真っ当な競技として生き残る方向に舵を取り直したのは必然だった。