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【RIZIN】牛久絢太郎が王者・斎藤を“飛びヒザTKO”で衝撃の戴冠…マッチメイク「白紙」の大晦日、朝倉未来の対戦相手は誰になるのか?
posted2021/11/02 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
大晦日、RIZINフェザー級のマッチメイクは「白紙」になった。
10月24日、横浜のぴあアリーナMMで開催された『RIZIN.31』を終えての榊原信行CEOのコメントだから間違いない。今後の“ストーリー展開”、その太い筋が絶たれたのだ。
この日のメインイベントは、フェザー級タイトルマッチ。昨年11月に朝倉未来を下して初代王者となった斎藤裕の初防衛戦だ。挑戦者には同じく朝倉に勝っているクレベル・コイケが計画されていたが、実現せず。それでも斎藤みずから、ベルトをかけての試合を望んだ。大会メインイベンターの誇りと責任からだった。
10月2日には朝倉が再起戦で勝利。斎藤とのリマッチをアピールしていた。ここで斎藤が防衛すれば大晦日に斎藤vs朝倉か。そんな流れも見えてくる。
初参戦、タイトル初挑戦で見事にベルトを奪った牛久
それをぶった斬ったのが、挑戦者の牛久絢太郎だった。DEEPのフェザー級チャンピオンで、今回がRIZIN初参戦。立場としては“斎藤の相手”だが、そうでなければいきなりのタイトル挑戦もなかった。そして初参戦、タイトル初挑戦でベルトを奪ってみせた。
「自分でアピールして試合が実現して、結果につながった。ベルトも嬉しいですけど、流れを掴み取れたのが凄く嬉しいです」
試合後の牛久はそう語っている。序盤、目立ったのは斎藤のパンチ。特に右はいかにも重そうに見えた。だが牛久に焦りはなかった。フィニッシュになったのは2ラウンドに放った飛びヒザ蹴りだ。「狙ってました」と牛久は言う。やや劣勢にも見えた1ラウンドは、距離感を掴むために使っていたという。
「僕の今までのスタイル的に、相手はタックルを警戒していたはず。タックルを切ろうとすると重心が下にいく。そこで飛びヒザで(逆方向の)上を狙うと入るんじゃないかと考えてました」
牛久の入念な作戦勝ちで無念のドクターストップ
牛久が入念に作戦を立ててきたことは、チャンピオンの斎藤も感じていたそうだ。ヒザを狙っているのも感じた。それでも食らってしまう。タイミングが合ってしまう。右目の上から眉間にかけての出血。無念としか言いようがないドクターストップで、斎藤はベルトを手放した。
斎藤は修斗でもベルトを巻いた“正統派”の叩き上げ。朝倉には「華がない」などと挑発もされたが、だからこそ好対照なライバル関係になりうる。だが大晦日のリマッチはこれでなくなった。
といって、すぐに牛久vs朝倉が実現するというわけではない。朝倉はクレベルに負けて再起を果たしたばかり。斎藤とのタイトルマッチは再戦だからこそ意味があったが、牛久とはベルトを巡って向かい合う必然性、榊原の言う「ストーリー展開」が足りない。よって「白紙」とならざるを得ないのだ。単純に牛久と朝倉が闘えば盛り上がるのかといえばそうではなく「プロモーターとしては一ひねり、二ひねりしないといけない」と榊原。今のフェザー級は「すべてがシャッフルされた状態」だとも語った。