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<RIZIN>“朝倉未来を落とした男”がさらに有利に? 金網に囲まれて戦う《ケージ》導入で格闘技界はどう変わるのか 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2021/11/02 17:00

 <RIZIN>“朝倉未来を落とした男”がさらに有利に? 金網に囲まれて戦う《ケージ》導入で格闘技界はどう変わるのか<Number Web> photograph by Getty Images

7月にUFCで行われたジャスティン・ポワリエ対コナー・マクレガーの一戦。俯瞰で見ると、直径30フィート(約9.1m)の「オクタゴン」の広さがよくわかる

現役審判「ケージの方が環境としてフェア」

 そうした流れの中、2000年になるとニュージャージー州のアスレチック・コミッションがユニファイド・ルールの下でMMAの試合を行なうようになり、以後他の州もこのルールに準拠したルールでMMAの大会を認可するようになる。 断っておくが、ユニファイド(統一)といっても、地域によって全ての項目が統一されているわけではない。アメリカでも州ごとに細部の規定は異なる。ちなみにこのルールでは試合場はケージだけではなく、リングでもOKと規定している。

 にもかかわらず、アメリカにおいてMMAの試合場はケージが主流になっている。なぜか? RIZINでも審判を務める松宮智生(JMOC[日本MMA審判機構]副会長/清和大学准教授)氏は「ケージの方が環境としてフェアだから」と分析する。

「リングだとロープが邪魔になり、レフェリーが介入しなければならないことがある。レフェリーもケージの方が裁きやすい」

 例えば、リングでのMMAだと試合中にレフェリーが「Don’t move」をかける場面がある。ロープにもつれたり、場外に落ちそうな展開になると、試合を展開しやすいスペースに両者の体を移動させたり、向きを変えたりするためだ。

 対照的に試合場がケージになると、レフェリーがストップをかけるケースは激減する。ケージを壁に見立てると、グラウンドの展開でも動きが起こりやすく、試合の流れが阻害されにくくなるからだ。またリングを囲む4~5本のロープもないので、その隙間から選手がリング下に落ちる危険もない。

朝倉兄弟はジムにフルサイズのケージを設置

 RIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザや、朝倉未来を失神させたクレベル・コイケの台頭で脚光を浴びるボンサイ柔術勢の場合、試合場がケージになったらリングのとき以上に活躍する可能性が高い。彼らは総じてグラップラーで、ケージを壁にするとロープでは不可能だった柔術系の攻撃のバリエーションが格段に増える。

 現在、RIZINでファイトする選手の中にもケージ肯定派は多い。先日、牛久絢太郎を挑戦者に迎え、RIZINフェザー級王座の初防衛戦に臨んだ(出血によるドクターストップで王座陥落)斎藤裕もそのひとりで、牛久戦前の公開練習でケージ導入について言及している。

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