Jをめぐる冒険BACK NUMBER
更迭危機でハマった森保采配… 田中碧・守田英正・遠藤航の《4-3-3》にあった布石と“サウジ戦でミス”柴崎岳投入の効果とは
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2021/10/13 11:07
森保一監督は試合前の国歌斉唱で目に涙をため、試合後にはサポーターに「気持ちを合わせてW杯に行きましょう」と訴えかけた
後半25分に同点とされる直接FKにつながる守田のファウルの場面では、長友が相手サイドバックにアプローチした際、冨安健洋、吉田麻也ら最終ラインの横ズレが遅れ、守田の寄せも一歩遅れた。
こうしたミスが重なれば命取りになるということを改めて突きつけられた一方で、勝ち越しを狙う展開において、伊東、浅野、古橋亨梧のスピードスター3人を並べた前線が今後のオプションとして有効だということも確認できた。
柴崎を送り出した采配と“信頼関係”
さらに触れておきたいのは、1−1で迎えたゲーム終盤にサウジアラビア戦で痛恨のバックパスミスを犯した柴崎を送り出した采配だ。
森保監督からすると、勝ち越しを狙ううえで最適なカードを切ったに過ぎないだろう。そして実際、その後に勝ち越しゴールが決まったが、この交代策は、柴崎自身だけでなく、チーム内外に向けた「このチームに柴崎は必要だ。サウジアラビア戦のミスで信頼をなくしたわけではない」というメッセージになったはずだ。
こうした采配が、チームの結束を高め、指揮官と選手の信頼関係を強めていく。
人を変え、形を変えるという指揮官の大きな決断によって、日本代表がひとつの“型”を手に入れたのは間違いない。
様々な布陣を自由自在に使い分けられるのが理想
しかし、だからといってこの4-3-3は、どんな相手にも通用する魔法のシステムというわけではない。
「我々のストロングポイントをしっかり出し、相手の良さを消すために」と指揮官が語ったように、あくまで今回の相手に対して戦術的に有効だっただけ。4-2-3-1に加え、4-3-3というオプションが増えたに過ぎない。
対戦相手がどのような対策をしてこようが、試合中に修正してこようが、4-2-3-1、4-3-3、3-4-2-1を使い分け、日本の選手たちが試合中に自在に対応できるようになる――これが、指揮官の理想だろう。
そのレベルに至るには、今回のように実戦でチャレンジし続けて自分たちのモノにするほかない。
次戦は11月11日、アウェイのベトナム戦となる。
2勝2敗で終わった9月、10月シリーズを振り返ると、オマーン戦、サウジアラビア戦と、いずれも連戦の初戦を落としている。所属クラブから代表チームに集合し、初戦を迎えるまでのコンディション調整など、準備に問題があるのは明らかだ。
次のベトナム戦は木曜に行われるので、4日前の日曜に所属クラブの試合が組まれていて、合流の遅れる選手はスタメンから外すなど、これまでとは違う対策が必要だろう。
ともあれ、日本代表チームは息を吹き返した。
この先も依然として負けられない戦いは続くが、今回のオーストラリア戦に向かうのと同じくらいの準備とテンションですべての試合に臨めれば、カタールへの道は開かれるはずだ。
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