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「藤井さんの終盤力はNo.1だからこそ」 豊島将之vs藤井聡太《19番勝負最終章》竜王戦を永世名人・谷川浩司の言葉から展望 

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph by日本将棋連盟

posted2021/10/07 17:15

「藤井さんの終盤力はNo.1だからこそ」 豊島将之vs藤井聡太《19番勝負最終章》竜王戦を永世名人・谷川浩司の言葉から展望<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

王位戦第3局の豊島将之竜王と藤井聡太三冠、立会人の谷川浩司九段。「19番勝負」の最後を飾る竜王戦は必見だ

渡辺名人も「両者のタイトル戦を参考にして藤井対策を」

 なるほど、百戦錬磨のトップ棋士にとっても、全敗がストップするのは心理的に大きな支えになる。昨年、藤井に王位戦でストレート負けを喫した木村一基九段が、その後にNHK杯で対藤井戦の初勝利を挙げた際に、「ホッとしました」と安堵の表情を見せたのをよく覚えている。

 豊島が王位戦第1局を圧勝したことにより、対戦成績に関する話題は再燃したのだが、その後、番勝負が進み、藤井が巻き返していくと自然に収束していった。竜王戦開幕直前の両者の対戦成績は、豊島の9勝8敗となっている。

 王位戦と叡王戦で敗れていても、まだ豊島が勝ち越しているのはそれまでの貯金が大きかったからだ。ただそれでも2つの番勝負で藤井から3勝を挙げた事実は重い。あの渡辺明名人ですら、棋聖戦五番勝負で2度戦ってトータル1勝6敗なのだ。

 新人王戦決勝、竜王戦挑戦者決定戦を含めて藤井は番勝負に7度出ているが、2敗したのは叡王戦だけだ。巻き返されても、藤井に最もよく勝っている棋士という豊島の評判はやはり変わらない。渡辺名人も「両者によるタイトル戦を参考にしながら、私も藤井対策を練っていきたい」と大注目している。

「藤井に最も勝っている棋士」の要因とは

 2つの番勝負で苦杯をなめた豊島からしたら、「藤井に最も勝っている棋士」と言われてもつらいものがあるだろうが、事実なのだから仕方がない。

 なぜほかの棋士よりも勝っているのか。要因の一つには、豊島の作戦構築の巧みさがあるだろう。藤井が王位防衛後の記者会見で「早い段階でこちらが気づいていない好手を指されて、リードされる展開が多かったです」と語ったように、序盤で苦しくなることが多かった。

 もちろん、藤井が序盤ベタなわけでは決してない。AIを用いて、1つの変化をとことんまで深く突き詰める豊島のスタイルが対藤井戦には効果的に作用しているのだろう。

 トップ棋士のAIの使い方もそれぞれだ。渡辺名人は変化を深掘りするというよりは、相手の意表を突いたり、自分が力を発揮できる展開に持って行ったりするための変化を探すのに使っている印象だ。永瀬拓矢王座は若手強豪との「VS」とAI研究のハイブリッドで、序盤研究に独自の整理を施しているとの評判だ。

 昨年末、竜王位を防衛した豊島に話を聞いた際に「AIで研究したい新しいテーマができた」という話をしていたのが印象深く、今年5月に取材をした際にも改めて尋ねてみた。

【次ページ】 谷川九段が考える「AIが棋士に与えた影響」

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