「藤井さんの終盤力はNo.1だからこそ」 豊島将之vs藤井聡太《19番勝負最終章》竜王戦を永世名人・谷川浩司の言葉から展望

　いよいよ最終章の幕開けである。

　王位戦七番勝負、叡王戦五番勝負、そして竜王戦七番勝負。藤井聡太と豊島将之が3連続でタイトル戦で激突することから、「19番勝負」と呼ばれている。

　ご存じのように、王位戦は4勝1敗、叡王戦は3勝2敗でいずれも藤井が制した。そして最後の竜王戦が10月8日に東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で開幕する。

　本稿では王位戦と叡王戦を振り返りつつ、竜王戦の展望を行うが、ただやるのでは芸がない。

　今年5月に上梓された『藤井聡太論　将棋の未来』（講談社）が5万部を突破した谷川浩司九段と、私は王位戦開幕直前に池袋の「ジュンク堂書店」でオンライントークイベントを行った。永世名人の谷川九段の視点はさすがに違う。藤井と同じ「中学生棋士」でもあり、経験に裏打ちされた視点には何度も唸らされた。

トークイベントの際の谷川浩司九段　©Satoshi Shigeno

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　その谷川九段のコメントをいくつか引用しながら、藤井と豊島について述べていきたいと思う。竜王戦七番勝負を楽しむ手引きにしていただければ幸いだ。

「6勝1敗という数字は過去のものです」と語っていた

　まずは王位戦開幕前に大きな話題になっていた、藤井と豊島の対戦成績から。当時は豊島の6勝1敗で、「藤井にとっての最後の壁が豊島」という報道もしばしば見られた。

　ただ谷川九段はこう語っていた。

「6勝1敗という数字は過去のものです。最初の3局くらいは豊島さんが格上だったので、勝っても自然ですね。後半も豊島さんが制していますが、内容は追い上げられています。その中で豊島さんもかなり工夫というか、あまり指さない横歩取りに誘導していたこともありました。やっぱり藤井さんのことをかなり意識していて戦略を立てていることがよくわかったと思います」

　藤井が二冠になったあとのJT杯と王将戦リーグの勝利は豊島にとって大きかったと思うが、それでも谷川は「6連敗で王位戦を迎えるのはちょっと厳しいでしょうけど、直近の朝日杯将棋オープン戦では藤井さんが勝っています。対戦成績はもうほとんど意識することなく勝負に臨めると思いますね」と棋士の立場での感想を述べた。

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