ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシムが語る日本代表…中国戦は「最高の結果」だが「誰も効果的ではなかった」と評価した真意とは?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/07 17:03
1−0の結果に批判的な論調も多かった中国戦を評価したオシム。名将の目に現在の日本代表はどう映ったのか
――ええ、食べました。
「楽しく食べて飲めばいい気分だろう?」
――そうですが(笑)。
「妻が料理を得意であればさらにいい。君もあまり外食はしないのか?」
――そうですね。ときどきは外で食べますが……。
「家で食べる方がいい。家は家だ。それでゴールは誰が決めたのか。大迫か?」
――そうです。
人々を魅了するプレーとは
「実はうたた寝をしてしまい、ゴールが決まった瞬間に妻が教えてくれた(笑)。日本の得点を見るためには、隣で起こしてくれる妻が必要だ。日本が勝つためにもとても大事なことだ(笑)。
負けたら日本全体が落ち込む。日本人は負けを好まない。負けは国全体の悲劇になる。だからオマーンに敗れた後に、中国に勝ったのはよかった。それなりの相手に対しての勝利だった。
中国は選手の質はともかく、数では他の国々を凌駕している。質もそのうちに向上するだろう。潜在能力は高い。素晴らしい環境のなかで日々サッカーをプレーしていれば進歩するのは間違いない。
(中継中のW杯ヨーロッパ予選を見ながら)ポルトガルがアゼルバイジャンを2対0とリードした。世界中の国々が進歩している。トルコは今や強豪だし、アゼルバイジャンも着実に成長している。アジアの国々も続くだろう。中国は選手の数からいえば、それなりのレベルの代表チームを2つ3つ編成できる。いつどんな相手とも戦えるチームだ。
プレーこそが大事で、結果ではない。プレーでクオリティの高さを示すことだ。コレクティブで規律に溢れたチームこそが人々を魅了する。どうしてこんな風にチームでプレーができるのかと誰もが考える。流動的でコレクティブ、調和のとれたプレーがどうして可能なのかと……」
――そうだと思います。
「皆さんによろしく言ってくれ。サリュ」
――メルシー、イバン。
フィリップ・トルシエとの対話でも常に感じていることだが、考え方の問題であり、美学や哲学の問題なのだろうと思う。だが同時に、サッカーの発展と成長――日本サッカーとサッカー一般――のために、何が正しいのかということでもある。オシムやトルシエがサウジアラビア対日本戦を見る機会があったら、どう感じたかをぜひ聞いてみたいと思っている。