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オシムが語る日本代表…中国戦は「最高の結果」だが「誰も効果的ではなかった」と評価した真意とは?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/07 17:03
1−0の結果に批判的な論調も多かった中国戦を評価したオシム。名将の目に現在の日本代表はどう映ったのか
――ちょっと疲れてはいますが、悪くはないです。
「それこそ大事なことだ。身体には気をつけて、よく食べよく眠る」
――あなたはどうですか?
「まあつつがなくやっている。ここヨーロッパでは簡単に監督が替わる。私に関してはそれも過ぎたことで、ある人物と会うことになるだろう。とても強い力を持った人物で、私と対立していた。どうしてそうなったか分からないが、彼はいろいろなことを言いふらした(註:ハンネス・カルトニックのこと。シュトルム・グラーツにオシムを招聘したカリスマ的な会長。オシムと二人三脚でシュトルムをヨーロッパの強豪に育てたが、後に袂を分かちオシムを誹謗中傷し辞任に追い込んだ。
その後、非はカルトニックにあったことが明らかとなり、カルトニック自身もクラブを財政破綻させてシュトルムを去った。2009年におこなわれたクラブ創立100周年の式典に、オシムは主賓として招待されたがカルトニックは招かれなかった。以降、ふたりの間に交流はなかったが、アシマ夫人によれば、オシムはカルトニックの70歳記念パーティーに招待され、10月3日におこなわれた誕生会に出席したという。わだかまりは氷解したということなのだろうか)」
――それで試合(中国対日本戦)は見ますか?
「テレビは常に傍にあって、番組プログラムはいつも見ている。そこには日本対オマーン戦があると書かれていたが、どういうわけか見ることができなかった。急に予定が変更になったのかも知れない。だが難しい試合だったのだろう。スコアは0対1か?」
――そうです。1対0でオマーンが勝ちました。
「ゴールが決まったのは試合の終了間際か?」
――そうでした。
「オマーンは決して弱くない。ジーコが監督だったときも何度か戦ったが、結果はすべて1対0だった。今はクロアチア人が監督を務めている。彼は有能だ。
それではまた。サリュ」
――メルシー、イバン。
中国戦は最高の結果だった
日本が1対0と中国を下した後、再びオシムに電話した。受話器の向こうから聞こえるアシマ夫人の声も、オシムの声も明るかった。
――(中国戦は)悪くはなかったです。
「このような試合で得られる最高の結果だった。素晴らしかった。日本は自信を持ってプレーし、ゲームを支配した。周囲をよく見て様々なトライをし、何度も得点のチャンスを作り出した。効率を欠いたのが唯一の問題だった。いいプレーをすることにこだわり過ぎて、余計なトライも少し目立った。そこはちょっと残念で、こういう試合では効果的に点を取ることが何よりも求められる」
――特に前半はそうでした。