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オシムが語る日本代表…中国戦は「最高の結果」だが「誰も効果的ではなかった」と評価した真意とは?
posted2021/10/07 17:03
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
イビチャ・オシムに電話をしたのは、W杯アジア最終予選第2戦、中国対日本戦の始まる前だった。日本が敗れたオマーン戦もヨーロッパで放映されたが、気づかずにオシムには知らせなかった。オシム自身も探したが見つけられず、試合を見ることはできなかった。
アシマ夫人に試合の情報を伝えるためにかけた電話で、運よくオシムとも話ができた。そして試合の後で、もう一度オシムと話した。日本の勝利を心から喜んでいたオシムだが、言葉を続けるうちに次第に本音がのぞきだす。結果はもちろん大事だが、結果以上に大事なものがあると彼はいう。
オシムの言葉を聞こう。
――元気ですか?
「今、ちょうど起きたところだ。これから外出しなければならないから。医者に行かないと。それからテレビも見る。試合があるだろう。妻がオマーンと言っているが」
――いいえ。中国対日本戦がこれから始まります。
「オマーン戦はもう終わったのか? 番組表を探したが見つからなかった。日本のメンバー構成がどう変わったのか、新しい選手たちを見たかった。で、どうなったんだ?」
――日本が敗れました。単純にオマーンが日本を上回りました。
「そうか。Jリーグは始まっているのか?」
――それで日本は準備に時間が取れなかったのに対し、オマーンは事前にセルビアで1カ月間の合宿をおこないました。監督はクロアチア人のブランコ・イバンコビッチで、素晴らしい準備をしたと思います。
オシムの目に映るサッカーと世界
「コロナの状況はどうなっているのか? 世界的な問題で、どうしていいのかまだわかっていない。人々が規律をもって暮らしているとは思えない。ワクチンが行きわたらないのも大きな問題だ。
それから戦争も相変わらず世界中で起きている。カブールの状況は悲惨だ。鎮静化することがない」
――アフガニスタンは大変です。
「日本は地理的に離れているから、影響はそう大きくはないだろう。旧ユーゴでもモンテネグロで問題が起こっている。セルビア教会に属する一派とモンテネグロ教会に属する一派との対立だ。小さな国なのであっという間に抗争が起こった。権力を握っていた人々の多くが、今は監獄に収監されている。社会は秩序を失い、警察も抑止できない。なるべく早く収まってほしいが、今は問題しかない。
ボスニアの状況はさらに悪い。権力を求めて3つの勢力がずっと争っている。一般庶民はどうしていいかわからず困惑している。ひとつ(イスラム系)はアメリカと結び、セルビア系はロシアの支持を受けている。クロアチア系はドイツとヨーロッパに依拠している。その状態がずっと続いている。あおりを食うのは常に庶民だ。本当に問題だらけだ。
それで君はどうなんだ?」