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「どうにもできない感情と…」巨人・菅野智之が“13連勝のフォーム”を捨て、“完全復活”できた理由
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/09/03 13:05
9月2日のヤクルト戦、最後を締めたビエイラを迎える、菅野智之と原監督
今季開幕直後に左足首の靭帯損傷で大きく出遅れた千賀は、6月17日の三軍戦でマウンド復帰。菅野の辞退を受けて急遽、追加招集という形で五輪代表メンバー入りを果たした。
しかしその後も状態が上がらないままに五輪本戦に突入。そこで千賀が行ったのが、以前のメカニカルに戻すという修正だったのである。
「最低限これはしないと抑えられないという部分は自分の中で把握しているつもりなので、そこの自分の中のメカニックを最低限、戦える状態にできた。常日頃からそういうことばかりを考えていますし、とにかくそれがここでできて良かった」
ノックアウトステージ初戦の米国戦で1点を追う6回から2イニングを1安打無失点に抑えた。このピッチングが点の取り合いだった試合を落ち着かせ、最終回の同点劇、そしてタイブレークでのサヨナラ勝利へと結びつけた。この米国戦での白星が、日本代表が金メダルを獲得する1つのカギとなるものとなった。
土台に戻ることは決して後退ではない
千賀もまたポスティング制度でのメジャー移籍を視野に入れながら、ここ数年、「より良いものを」追い求めてきた。菅野同様に日本での実績に甘んじることなく様々な試行錯誤を繰り返してきている投手の1人でもある。
菅野と千賀に共通するのは、土台になるものがあって、その上でさらなる上を目指して常に大胆な変化を求めていることだ。そしてもう1つが、行き詰まったときには戻れる土台があるということでもある。
ただ、その土台に戻ることは決して後退ではない。
新しいものにチャンレジしたことで、戻った土台で見えてくる景色は必ず以前とは変わるはずである。
「身が引き締まるというか……そういう感じですね」
菅野でいえば腕始動のフォームで得た感覚から、以前の上下が連動したフォームになることは「戻る」ことではない。それもまた常に求め続けてきた進化の1つであるということだ。
「すごい感慨深いものがありますけど、でも本当にまだまだなので。これからの方が大変だと思いますし、身が引き締まるというか……そういう感じですね」
復活登板をこう振り返った菅野。
阪神、ヤクルトと繰り広げる優勝争いは9月に入って、さらに激しさを増してきた。
「まだまだ。これからどんどん取り返していきたいです」
エースのさらなる進化は巨人にとっては、3連覇に向けて最大のアドバンテージになるはずである。
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