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「どうにもできない感情と…」巨人・菅野智之が“13連勝のフォーム”を捨て、“完全復活”できた理由

posted2021/09/03 13:05

 
「どうにもできない感情と…」巨人・菅野智之が“13連勝のフォーム”を捨て、“完全復活”できた理由<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

9月2日のヤクルト戦、最後を締めたビエイラを迎える、菅野智之と原監督

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Sankei Shimbun

 圧巻のピッチングだった。

 9月1日の京セラドーム。ヤクルトを相手に巨人・菅野智之投手が“完全復活”を感じさせる投球で4月23日以来の今季3勝目を挙げた。

 6回2死から塩見泰隆外野手に当たり損ねの内野安打を打たれたが、8回108球を投げて許した安打はその1本だけ。与えた四死球もわずか2つで二塁も踏ませぬ完璧な内容だった。

「右打者の中に入る投げミスも少なかったし、外の出し入れも良かった。(小林)誠司がうまく引っ張ってくれて、より楽に投げられました」

「どうしていいか分からない時期もありました」

 真っ直ぐのMAXは151km。そしてこの日は7月1日以来のバッテリーを組んだ小林の助言で割合を増やしたカットボールの制球が冴え渡り、ヤクルト打線を翻弄した。4連続を含む8奪三振は、本来の力で圧倒するピッチングができた証だった。

「どうしていいか分からない時期もありましたけど、誰もが順調に最後まで歩める訳じゃない。それがいま来たんだと自分に言い聞かせて現実を受け止めてやってきました」

 昨オフにメジャー挑戦表明。しかし結果的には交渉がまとまらず一旦、移籍を断念しての巨人残留で始まったシーズンだった。しかし移籍交渉でオフの準備もままならないままに突入した今季は、予想外の苦闘の連続だった。

「力に変えるとか言いますけど、そんなに簡単なものではなくて……」

 開幕直後の3月30日に下半身のコンディション不良で一軍登録を抹消。1度は復帰したものの、5月8日には古傷でもある右肘の違和感で再び一軍登録をはずれ、その後も本来の状態を取り戻せぬままに再調整のために抹消劇を繰り返した。そして7月2日にコンディション不良で4度目の登路抹消をされて、目標にしていた東京五輪代表も辞退した。

「悔しさだけでしたね」

 テレビで観た仲間達の活躍にエール送ると同時に、そこにいない自分への思いが募った。

【次ページ】 腕から始動するフォームから以前のフォームへと戻した

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