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「どうにもできない感情と…」巨人・菅野智之が“13連勝のフォーム”を捨て、“完全復活”できた理由
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/09/03 13:05
9月2日のヤクルト戦、最後を締めたビエイラを迎える、菅野智之と原監督
こう語っていたのは元巨人監督の堀内恒夫さんだ。
腕から始動することで左肩がしっかり入り、確かにスムースに動きだしができるようになった。しかし、その一方で上半身と下半身の連動がうまくいかずに腕が遅れてしまう。腕が遅れれば、踏み出した足にしっかり乗れずにボールに指がかかりにくくなる。
それが堀内さんの解説だった。
象徴的な場面が昨年の日本シリーズ第1戦にあった
象徴的な場面が昨年の日本シリーズ第1戦の2回に栗原陵矢外野手に浴びた2ラン本塁打だったように思う。
ボール2から内角に甘く入ったスライダー。
「失投といえば失投です。でもあれはバッテリーのミス。ランナー一塁でインコースにスライダーを曲げてファウルを打たせてという場面で、ボール先行カウントから、首を振ってスライダーを投げた。栗原も感づくと思うんです」
後にその1球について菅野に聞いたときの答えだ。
もちろん本人が語っている通りだと思う。
ただ1つだけ言わせてもらえるなら、たとえ狙われていたとしても、それでも指にしっかりかかった球を投げられていたら、打たれなかったはずだ。それくらいに菅野のスライダーにはキレがあるし、制球力もある。勝負どころになればなるほど、集中力が増せば増すほど、そういうボールを投げることができる。
それが菅野が菅野たる所以だからだ。
東京五輪の千賀滉大投手にも同じようなことを感じた
「フォームを変えたってことじゃなくてその日、その日の微調整の1つ。もしかしたらああいう風に(腕始動のフォームに)戻るかもしれないし。それもフォーム変更というのではなく微調整の1つです」
ヤクルト戦後にこう語った菅野にとってみれば、これも過去に戻ったのではなく、新しい道へと踏み出した1つの進化だったのだと思う。
実は同じようなことを東京五輪の千賀滉大投手に感じた場面があった。