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共有音源はあえて使わずに…智弁和歌山、近江など応援名物校の“プライド”とブラバン録音秘話 「甲子園DJ」のパフォーマンスも凄い 

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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posted2021/08/26 06:00

共有音源はあえて使わずに…智弁和歌山、近江など応援名物校の“プライド”とブラバン録音秘話 「甲子園DJ」のパフォーマンスも凄い<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

戦況をつぶさに読み、「ジョックー!!」と”魔曲”『ジョックロック』の演奏指示を出す、智弁和歌山応援団顧問の坂上寿英氏(2019年撮影)

日本航空の応援曲は、空がテーマ

 日本で唯一航空科のある日本航空(山梨)の選曲テーマは、「航空と空、勇敢な戦い」。1990年にJALの沖縄キャンペーンソングとしても使われた、米米CLUBの『浪漫飛行』や、木村拓哉がパイロット役を演じたドラマ「GOOD LUCK!!」のテーマ曲『Departure』、映画「史上最大の作戦」の『The Longest Day March』、『サンダーバード』など、他の学校とはひと味違うラインナップ。

 同校吹奏楽団音楽監督の千野こころ氏は、「他にはない独自の応援、オリジナリティを大切にしている。理事長と相談して、最終的に航空の良さを出せるこの9曲に絞りました」と話す。

 録音で苦労した点を尋ねると、「小さなミスも球場ではわかりませんが、録音では隠せません。球場では、とにかく遠くに音が響くように、そして、太鼓の音に消されないよう、楽器を鳴らすことに命をかけて演奏していましたが、今回は録音ということもあり、音楽的にきれいに奏でることを心がけました。演奏の仕方を球場と変えなければならないことは、生徒たちにとって大きな課題でした」。

 たしかに、球場ではとにかく「大きな音で吹く」「勢いのある音を出す」というスタイルの演奏が多く、ステージでの吹き方とはまったく違う。甲子園で演奏した翌日に急に頭を切り替えるとなると、生徒たちが戸惑うのも無理もない。

 急な録音に対応することになったが、「野球部もこんなにがんばっているんだから、私たちも最後まで一音一音にこだわり、妥協せずに演奏しよう、という想いで乗り越えられました」(千野氏)。

 25日、智弁学園対日本航空をテレビ観戦していたが、たしかに音が前回の試合とはまるで違った。勢いのある力強い応援から、アンサンブル力を重視した、美しいハーモニーが甲子園に響いていた。

 さまざまな制約の中で工夫して録音し、甲子園で戦う学校の仲間を後押しする吹奏楽の応援。音楽の力は、選手たちにもしっかり届いているに違いない。

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