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共有音源はあえて使わずに…智弁和歌山、近江など応援名物校の“プライド”とブラバン録音秘話 「甲子園DJ」のパフォーマンスも凄い

posted2021/08/26 06:00

 
共有音源はあえて使わずに…智弁和歌山、近江など応援名物校の“プライド”とブラバン録音秘話 「甲子園DJ」のパフォーマンスも凄い<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

戦況をつぶさに読み、「ジョックー!!」と”魔曲”『ジョックロック』の演奏指示を出す、智弁和歌山応援団顧問の坂上寿英氏(2019年撮影)

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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 連日熱戦が続く甲子園。高校野球に欠かせない吹奏楽の応援も、「演奏者は50人以内」「ソーシャルディスタンスを保って演奏する」「楽器の結露水の処理ルールを守る」などの条件付きで許可されていたが、新型コロナウイルスの感染状況をふまえ、22日から入場禁止となった。

 今回は、学校判断で応援に行くことを断念した学校もあることから、事前に録音した音源を流してもOK。吹奏楽部がない学校や、録音できなかった学校は、日本高野連が用意した尼崎市立尼崎高校吹奏楽部の音源を使用することができる。

 試合に勝ち進み、最後まで現地で応援する予定だった学校は音源を用意していないため、高野連から20日に入場禁止が発表された後、急遽録音することに。もちろん市立尼崎高校の音源を使ってもいいのだが、「この曲といえばこの学校」といった名物曲やオリジナル曲のある学校は、プライド的にそうもいかないだろう。兄弟校の智弁和歌山と共通のチャンステーマ『ジョックロック』や、『三番』『天舞』など複数のオリジナル曲を持つ智弁学園(奈良)も、「うちが市尼さんの音源を使ったら、周りから何をいわれるかわかりません(笑)」と、吹奏楽部顧問の青山浩氏が冗談を交えて話す。

監督も「感無量」…甲子園DJの腕前

 3年ぶりの出場となった浦和学院の吹奏楽部は、感染状況を鑑み、早々に甲子園行きを断念した。30年にわたり野球部を率いてきた監督の森士氏が今夏で退任ということもあり、何としてでも駆けつけたかっただけに、学校側としても苦渋の決断だったという。

 同校は、『浦学サンバ』などの名物曲を、メドレー形式で4パターン録音。音源を操作するのは、勝手に“甲子園DJ”と呼ばせていただいているが、甲子園で阪神戦などプロ野球の音響を担当しているスタッフだ。「どのタイミングで何の曲をかける」といったルールを書いた指示書を学校側が用意し、それをもとに操作する。

 浦和学院の指示書を見せてもらったが、応援曲がちょっと複雑な構成のため、「奇数番号の前奏は各イニングの頭でのみ流し、その後は偶数の曲を繰り返す」など、はっきりいって難しい……! すぐには覚えられないので、音源を聴きながら何度も指示書を読み込んでシミュレーションしないと、とても操作できないだろうと感じた。それだけに、同校吹奏楽部顧問の新谷卓氏もテレビ中継を見て、「音源を流すタイミングが素晴らしく、感無量です」と甲子園DJの力量に感激していた。

【次ページ】 タイミングが難しい智弁和歌山『ジョックロック』は…?

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