酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
中田翔は無償トレード、張本勲は三顧の礼… “同じ背番号10”も巨人で待ち受ける「イバラの道」〈2戦目で初本塁打〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number/Kyodo News
posted2021/08/23 17:03
大阪桐蔭、日本ハム、侍ジャパンで主軸を務め続けた中田翔。自らを省みたうえで、巨人で再起なるか
2005年以降に限れば、本塁打2位は2010年湘南シーレックス(DeNAの二軍)の筒香嘉智が記録した26本、打点2位は2017年阪神、陽川尚将の91打点である。この年の中田の打率.326はロッテ、ムニスの.342に次ぐ2位。あわや三冠王という大活躍だった。
本塁打以上に目立つ打点王3回など「RBIイーター」
2010年から一軍に定着した中田翔は、中軸打者として活躍し始める。
二軍での大活躍から考えて、中田はNPBの本塁打記録を更新するような長距離打者になるかと思えたが、そうはならず、本塁打は20~30本、打率は.250前後、しかし打点王を3回、100打点以上は5回も記録。中田翔はMLBでいう屈指の「RBI(打点)イーター」になったのだ。
渋い記録でいえば、2018年には史上2位の13犠飛を記録。通算65犠飛も内川聖一(現ヤクルト)の69犠飛に次ぎ現役2位だ。
ここ10年(2011~2020年)のパ・リーグの打点王は、中田翔、中村剛也が各3回、浅村栄斗が2回、李大浩とデスパイネが各1回。なんと大阪桐蔭勢が10回のうち8回を占めている。これは偶然なのか、それとも大阪桐蔭の指導方針に起因するものなのか。
筆者が印象に残っているのは、2014年、オリックスとのCSファーストステージだ。
オリックスは21世紀になってから2回目のポストシーズン。京セラドーム大阪のファンは沸きに沸いていた。1勝1敗で迎えた第3戦は1-1で延長となったが、中田翔は10回表、平野佳寿から決勝の特大ホームランを打った。
中田は打撃フォームが度々変わったが、当時はノーステップでどっしりと構えて、一振りで仕留める凄さがあった。
試合の後、オリックスファンは肩を落として帰路についたが「あいつに打たれたらしゃあない」と口々に話していたのを思い出す。
実は外野守備だと強肩、一塁でゴールデングラブ賞4回
中田翔のもう一つの魅力は外野守備だった。
一軍昇格1年目、2年目と一塁手での起用が多かったが、2011年から左翼で使われた。2011年は11捕殺、12年には驚異的な19捕殺、9併殺も記録した。元投手だっただけに、肩の強さは抜群。三塁ベースを回った走者の姿を目で追いながら余裕をもって本塁で刺すことができた。
2013年に7捕殺と減少するが、これは中田の肩に恐れをなして、相手の三塁コーチが腕を回さなくなったからだ。