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ジョコビッチは“歴代最高の選手”になるか? 思い出す“絶対王者”フェデラーの苦悩「自分で怪物を作ってしまった」
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2021/07/12 17:02
2021年のウィンブルドン男子シングルを制覇したジョコビッチ。男子で史上初となる「ゴールデンスラム」にまた一歩近づいた
「自分を最高の選手だと思っているし、そう信じている。そうでなければ、グランドスラムで優勝するとか歴史を作るなどと自信を持って口に出すことはできない。史上最高かどうかは他の人に議論してもらいたい。ただ、この話に加わることができるのは大変光栄だ」
フェデラーが語る“絶対王者の苦悩”「怪物を作ってしまった」
フェデラーが以前、自分の中に「怪物」を育ててしまった、と話したことが思い出される。07年、彼の絶頂期の話である。フェデラーはランキング1位だったが、背後にナダルが迫っていた。フェデラーは、勝つことが当然、別格の選手と見られる重圧を率直に語った。
「僕は自分で怪物を作ってしまった。すべての大会で優勝しなければならないと思い込んでいた。1セット落としただけでも、出来がよくなかったと言われてしまう。そんな怪物を作ってしまったのは僕の失敗だった」
周囲の期待と注目、聞こえてくる雑音。フェデラーが語ったのは、頂点に立ち続ける重圧と、重圧への向き合い方への反省だった。その後、フェデラーは08年のウィンブルドン決勝でナダルに敗れ、翌8月にはランキング1位の座をライバルに明け渡した。
ジョコビッチは今、自分を「最高の選手」と位置付け、ゴールデンスラムを目指すと公言する。彼の中には、フェデラーの言う怪物は存在しないのか。重圧に押しつぶされると感じることはないのだろうか。こうした強い言葉を口に出すことで、パンドラの箱を開けるとは思わないのだろうか。ジョコビッチに尋ねたなら、これが答えだと言うように、握りこぶしで心臓のあたりを「どん」と叩き、ニヤリと笑うだろう。
東京五輪出場は、今のところ「五分五分」
東京五輪への出場は今のところ「五分五分」だという。無観客での開催や、日本に入国するスタッフの人数制限がネックになっている。五輪の金メダルはまだなく、19年には五輪と同じ会場の楽天ジャパンオープンに出場して下見を済ませるなど、もともと五輪への意欲は高い。出場すれば、我々は彼がつくる「歴史」を目撃できるのだが。