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いよいよイングランドが“無冠の母国”に終止符か 個人技+連係+結束のハーモニーに“真の強豪国”感【EURO】
 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2021/07/05 11:03

いよいよイングランドが“無冠の母国”に終止符か 個人技+連係+結束のハーモニーに“真の強豪国”感【EURO】<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

ウクライナを4-0で破ったイングランド。セント・ジョージズ・クロスの国旗も意気軒昂と揺れている

利他的なエースも指揮官もチーム全員を称える

 クリスティアーノ・ロナウドもキリアン・ムバッペもケビン・デブライネもルカ・モドリッチも姿を消した今大会。4強に生き残っている最大のスター選手といえば、ケインになるだろう。

 だが飾らない利他的なエースは、スターオブザマッチの会見でも、個人へのスポットライトを避けるように全体の力を強調し、いつも通りに地から足を離さなかった。

「本当に全員がファンタスティックなパフォーマンスを見せてくれた。(圧倒的な出来だったけど?)僕らが正しい方向へ進んでいるのは確かだ。でもまだ何も成し遂げていない。タフな試合がまだ残っているので、しっかりと準備したい」

 サウスゲイト監督も同様に、組織で掴んだ白星を称えた。試合終了の笛が鳴った後、指揮官は起用しなかったグリーリッシュを抱きしめ、耳元で長く囁いていた。今や国民的なアイドルになりつつある背番号7も、そんな監督のことを理解しているはずだ。

「出場した選手だけでなく、チーム全員のおかげだ」と試合後の会見でサウスゲイト監督は話した。

「出場しなかった選手たちも、このチームの大きな一部なのだ。これほど大きな集団を維持していくのは、本当に難しい。全員を巻き込み、幸福感と価値を感じてもらうのは。

 だが彼らは進んで犠牲を払い、グループの形成を助けてくれる。我々が準決勝に残れたのは、そこが大きい。もちろん、クオリティーも等しく重要だが、すでに敗退した国の多くは、うちの選手たちのようなスピリットを備えていなかったと思う」

今回の4強はどこも結束力が高い

 確かに、イタリア、スペイン、デンマーク、そしてイングランドと、今回のセミファイナリストは、どこも結束力の高い組織的なチームに見える。

 フランスを筆頭に、派手なスター選手を抱え、肥大したエゴがぶつかりあったチームとは大きく異なる。欧州スーパーリーグの騒動の後に、代表の主要大会で示されているのは、フットボールの持つ真の価値に思えてならない。アイデンティティーと結びつき──このスポーツがどれほど大きくなろうとも、根源的なものは変わらないのだ。

【次ページ】 「無失点はコレクティブな成果だ」

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