球体とリズムBACK NUMBER
いよいよイングランドが“無冠の母国”に終止符か 個人技+連係+結束のハーモニーに“真の強豪国”感【EURO】
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byREUTERS/AFLO
posted2021/07/05 11:03
ウクライナを4-0で破ったイングランド。セント・ジョージズ・クロスの国旗も意気軒昂と揺れている
5バック気味のウクライナを向こうに、プレミアリーグで活躍するボールプレーヤーたちが堂々とパスを回す。勝負どころで急激にスピードを上げ、素早い連係と個人技で崩す手法の練度は大会を通して高まっている。4分には早速、ラヒーム・スターリングの完璧なタイミングのラストパスから、ハリー・ケインが滑り込みながら決めて先制した。
ここまで大会唯一の無失点、受け身でも動じず
ここまで唯一、無失点を続けるイングランドは、受け身に回ってもまったく動じない。ウクライナはオレクサンドル・ジンチェンコを中心に、工夫しながら組み立てようとするが、中盤ではデクラン・ライスやカルバン・フィリップスらが、最終ラインではハリー・マグワイアやジョン・ストーンズたちが、激しいプレスとチェイスで黄色いシャツに片時も自由を与えない。
相手のCBが負傷交代し、システムが4-3-3に変更されても、やることは変わらず、主導権を握り続ける。ボールを持っても持たなくても、これほどまでに強者然としたスリーライオンズは、過去のメジャートーナメントでほとんど見たことがない。
マグワイア、ケイン、ヘンダーソンで勝負あり
後半の開始早々には、ケインがFKを得ると、ルーク・ショーが精緻なキックでマグワイアの強烈なヘディングでの追加点をお膳立て。さらに4分後には、再びショーのクロスからケインが頭で加点する。攻守の要が前後半の序盤にゴールを重ねる理想的な展開だ。若い選手の多いウクライナは精神的なダメージを負い、事実上、勝負はここで決した。
以降は累積警告の不安や軽傷を抱える選手を交代させ、そのうちのひとり、ジョーダン・ヘンダーソンが63分にマウントのCKからダメ押しの4点目を頭で決めた。主将のケインが「最高のロールモデル」と称えるリバプールのキャプテンにとって、代表初得点だ。前線、守備陣、中盤のリーダーのゴールによって、曲者と思われたウクライナに大勝。次はロンドンに戻って、デンマークとの準決勝だ。