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史上初のJ1、ACL“2冠”へ 川崎・鬼木監督が「90分(体力を)持たせる必要はないから」と選手に指示するワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2021/06/25 11:03
ベンチで小林悠(左)と脇坂泰斗(右)に指示を出す鬼木監督。選手交代は「感覚的なところでいつも決めている」と語る
「このチームの凄さは一人ひとりの向上心、志ですよね」
出場した選手はリカバリーに時間を掛け、出なかった選手たちはダッシュを繰り返していた。大勝したことで終わりにせず、試合後すぐに"第2ラウンド”に切り替えていた。
「そこはフィジカルコーチの篠田(洋介)さん中心にやってくれていますし、僕のほうから何か言うってこともないです。このチームの凄さは一人ひとりの向上心、志ですよね。ウチは全体練習が終わってからそれぞれが居残りでやっています。強制じゃない分、逆にパワーがあるのかなっていう気もしています」
一言で表現するなら、選手個々の意識が高い。と同時に監督とコーチングスタッフの意識が高いゆえの「全体共有」でもある。
鬼木自身もここフロンターレで7年もコーチを務めてきた。任せてくれるほうが、やり甲斐も大きくなるのは味わってきたこと。だから積極的に、コーチ陣に委ねている。
昨季からのフロンターレの特長だが、セットプレーからの得点が多い。名古屋との第1戦の3点目もコーナーキックからだった。
「セットプレーもコーチ陣のおかげです。寺田周平、戸田光洋、二階堂悠、吉田勇樹とそれぞれのコーチは自分の役割をこなして、選手たちに落とし込んでくれているので僕は何もしていないんです(笑)」
「選手には『Jリーグを自分たちで引っ張っていこう』と」
意識も同じ、温度感も同じ。
本人は「何もしていない」を連呼するものの、統括して全体をマネジメントしているのが指揮官である。セットプレーに、“鬼声”に、リカバリーに。それらは翌週の“第2ラウンド”の勝利にもつながっていた。
「名古屋との最初の試合に向けては10日ほどあったので、念入りにトレーニングに落とし込んできて、自分たちのサッカーがきちんとやれれば点は入るなっていう自信はありました。そして去年から選手には『Jリーグを自分たちで引っ張っていこう』という話はしています。上位対決で、あの日Jリーグがあったのは1試合だけ。注目されるわけですし、しっかり戦おうという意思統一はできていたと思います」
使命感に近い思いも、チームの力に変えている。
隙を見せないのは選手やチームに求めるばかりでなく、まずは自分から。