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史上初のJ1、ACL“2冠”へ 川崎・鬼木監督が「90分(体力を)持たせる必要はないから」と選手に指示するワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2021/06/25 11:03
ベンチで小林悠(左)と脇坂泰斗(右)に指示を出す鬼木監督。選手交代は「感覚的なところでいつも決めている」と語る
「『90分(体力を)持たせる必要はないから』と言ってます」
交代カードの切り方にしてもそうだ。毎回4、5人使うのが定着しているものの、早々に一気に替えたり、逆にできるだけ長く引っ張ったりといろいろなパターンがある。
3月13日の柏レイソル戦(ホーム)では0-0で迎えたハーフタイムに3人をチェンジさせている。
「(交代は)ゲームを見てのフィーリングを大事にしています。この流れを継続したほうがいいと思うのか、それともここでもうひと押ししておかないとちょっと流れを持ってこれないぞと思うのか。あのときは、自分たちから流れを変えなきゃダメだな、と。ハーフタイムというのは自分の言葉で全体に伝えられるので、統一しやすいタイミングなので。
ただ、交代させる選手がダメだからということじゃないんです。元々我々は、目の前の1試合に勝つために全員が協力して戦っていますから。最初に出て相手を掻き回して、違う選手で仕留めていくっていうやり方だってある。選手それぞれにタスクがあるので、選手にも『90分(体力を)持たせる必要はないから』と言ってます」
「そこはもう感覚的なところでいつも決めてます」
一方でJ1最速100勝を挙げたホームの鹿島アントラーズ戦(5月30日)は後半19分に最初のカードを切り、2、3枚目は後半40分を過ぎてから。そして決勝点を挙げた小林悠に至ってはアディショナルタイムでの投入だった。
「確かに最近はちょっと引っ張る傾向にはあると思うんですけど、自分でも読めない(笑)。今、交代カードを切っても流れは変わるかもしれないけど、相手を追い越すところまでいかないだろうなとか、ならば我慢したほうがパワーは出てくるだろうな、とかいろいろと考えるので。勝ちにつながる判断はどっちなんだって、そこはもう感覚的なところでいつも決めてます。もしそれでうまくいかなかったら修正する。その繰り返しですね、本当に」
ヘッドコーチから2017年に監督に昇格して5年目。最速100勝に対する捉え方も「全体との共有」の視点に立つと、違った味わいがある。