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史上初のJ1、ACL“2冠”へ 川崎・鬼木監督が「90分(体力を)持たせる必要はないから」と選手に指示するワケ
posted2021/06/25 11:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
“首位攻防第1ラウンド”は、川崎フロンターレの圧勝だった。
4月29日、豊田スタジアム。ここまで12戦で10の無失点試合を記録している“堅守”名古屋グランパスに対して後半途中までで3点を奪い、守備も無失点で抑えていた。
残り10分を切ったところで、ベンチから鬼木達監督の声が響いた。
「知念、2(米本拓司)の背中から行けよ。2の背中、2の背中、そっちじゃない!」
名古屋のスローインに対して米本がフリーになっていたため、知念慶に対して相手に見えない角度から入ってボールを奪いに行けという指示であった。スコアは3-0で勝利がほぼ確実な状況ながら、米本の前に入るだけではなくて次の1点を奪うために手を緩めない守備を求めたのだ。そしてこの4分後に、遠野大弥による4点目が生まれている。
指揮官の“鬼声”はマイクにしっかりと拾われ、Jリーグ公式チャンネルにも動画が貼りつけられた。至るところで反響もあったと聞く。
「まさか声が拾われているとは(笑)」
鬼木は苦笑いを浮かべて言った。
「まさか声が拾われているとは思いもしませんでしたね(笑)。基本的にはどの場面においても隙を見せたくないのが一番。トレーニングでもそうですけど、その場で伝えられれば最も分かりやすいじゃないですか。もう一つ理由があるとしたら、この試合の翌週にも名古屋との対戦を控えているわけです。やっぱり相手に、何の勢いもつけさせたくない。もし1点でも獲られていたら、元気になるきっかけを与えてしまうことにもなりかねませんから」
一分の隙も見せたくない──。
試合後のケア一つ取ってもそうだ。