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王者ソフトバンクが12球団“最下位”の意外な数字…なぜホークスから若手エース候補が出てこないのか?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/05/19 17:06
2017年のドラフト2位で専修大からソフトバンク入りした高橋礼。一軍で先発している数少ない若手投手のひとりだ
5月11日の本拠地PayPayドームのロッテ戦で自己最速を更新する大台の160キロを記録した。だが、この右腕は制球が課題で、開幕当初は「勝ちパターン」で期待をされていたが、今ではすっかり存在感を薄めてしまっている。
潜在能力の高さで言えば、米大リーグのドラフト1位を拒否して19歳で来日して3年目のカーター・スチュワートJr.も成長してきた。今年4月17日の西武戦で来日初登板を果たした。しかし、こちらも制球に難ありで工藤監督は「今のままでは通用しない」と手厳しかった。先日まで一軍に帯同されていたが、登板は試合の大勢がついた終盤イニングでのリリーフばかりだった。
「ファームで先発経験を積ませる」
短いイニングを全力で抑えに行くことで、マウンドでの集中力の高め方やアウト1つを丁寧にとる大切さを学ぶことは出来る。
よく経験の少ない投手が先発する際には「中継ぎのつもりで」「打者1人1人を全力で抑える」とコメントする。それが好結果を生むことは確かにある。
しかし、先発としてのゲームメイクや長い回を投げていく力配分などを身につけるのも必ず大事になる。それは試合の中でしか経験できない。
将来のエース候補を育てていくならば、ファームで先発経験をしっかり積ませるのも一つの方法論だ。少なくとも杉山については昨季のウエスタン・リーグで先発ローテを回り、規定投球回数もクリアする経験を積ませただけに、今季のような中途半端な立ち位置でブルペンに置いておくのは勿体ないように感じてしまう。
今季の中継ぎに欠かせない泉にしても、先日一軍に上がったばかりの板東にしても、もともとは先発適性の高い投手として入団してきた。今のまま固定してしまうのは少し惜しい。
球団と現場の考えに差異があると断じているわけではない。
工藤監督をはじめとした首脳陣がチームの将来を全く考えていないはずもない。
ただ、次代のエース候補が育っていない現実はしっかりと受け止めるべきだ。違和感が大きな傷口となってからでは、もう遅いのだ。