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王者ソフトバンクが12球団“最下位”の意外な数字…なぜホークスから若手エース候補が出てこないのか?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/05/19 17:06
2017年のドラフト2位で専修大からソフトバンク入りした高橋礼。一軍で先発している数少ない若手投手のひとりだ
ただ、リリーフは過酷なポジションだ。故障のリスクは常につきまとう。ソフトバンクの24歳以下もしくは入団5年以内の投手を見ると、リリーフで結果を残している選手が多い。たとえば‘18年ドラフト1位の甲斐野央はルーキーイヤーに65試合登板、26ホールドと活躍して故障離脱していたサファテや岩嵜翔の穴を埋めた。その甲斐野が故障すると、また別の投手が出てくる。今季でいえば泉(‘18年6位)や津森宥紀(‘19年3位)だ。
また、ソフトバンクは速球派の投手が育つ土壌がある。一例を挙げるならば、ウエイトトレーニングだ。一時は筋肉の肥大が野球の動作において邪魔になるとされたが、近年のプロ野球界では見直されている。たとえば巨人は今年になってボディビル元世界王者の鈴木雅氏から指導を仰ぐ取り組みを導入した。だが、ソフトバンクはその重要性にかなり早い時期から気づいており、やはりボディビル界の第一人者である高西文利氏と‘10年秋には契約を結んでいた。
そのため150キロ級のボールを投げ込む投手が次々と誕生する。つまりリリーフ適性の高い投手が生まれやすいのだ。
笠谷も杉山もスチュワートJr.も……
球団は中長期的に編成を行うのが仕事。一方で現場の首脳陣は目の前の勝利を追いかけるのが仕事だ。だから、リリーフ適性があると思われる投手がどうしてもブルペンに持っていかれる傾向が強くなる。
たとえば、今年開幕ローテ入りした7年目で24歳の笠谷俊介。6試合に先発したが1勝と振るわず、5月4日の登板の後に工藤公康監督はリリーフ起用を示唆した。左腕で150キロ超を投げられる希少性と奪三振能力の高さが判断の裏側にはあった。
実際に同12日に今季初めてリリーフ登板すると2回無安打5奪三振無失点と快投した。
速球派では今季3年目の杉山一樹もお化け級のポテンシャルの持ち主だ。