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「サッカー界への殺人未遂」欧州SL崩壊も… プレミアが悩む“選手の給与高すぎ+外資系オーナー問題”の解決策はあるのか
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/05/04 17:03
アーセナルサポーターも本拠地エミレーツ・スタジアムでオーナー陣への怒りをあらわにした
ガリー・ネビルという人選は悪くない
外資参入がプレミアのレベルアップに寄与しているのは間違いなく、外国人の実業家や投資家がサッカーに夢中になれなくても仕方がない部分はある。しかしながら、オーナーとして関わることになるスポーツ、その世界で活動するクラブと根底で支えるファンへのリスペクトは必須である。
その条件を満たさない人物が適任者であるはずがない。ビッグ6のなかではESL入りの首謀格と理解されるユナイテッドのオーナーは「ファンの信頼回復に全力を注ぐ」としているが、就任当初から信頼などされていないのだから失笑ものだ。
そんなグレイザー一族のように、クラブに負債を押し付けて、資金を投じるのではなく抽出に執着するような人物による買収劇は、許されるべきではなかったし、この先も繰り返されてはならない。
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サッカー界の厳格な番人としての新組織は、頂点のプレミアからピラミッドを貫く富の分配管理や、人種、性別、年齢などに基づく差別といった不平等をなくす上でも重大な役割を担う。
そうした組織の責任者には、ガリー・ネビルという人選も悪くはない。
ESLを許せないイングランド国民の心境を、テレビ解説者の立場で情熱的かつ理論的に代弁した46歳は、地元クラブのユナイテッドで生え抜きの主力となった現役時代から、母国代表とスペインのバレンシアでの指導者経験がある。さらには、サルフォード・シティ(現4部)の共同オーナーであり、弟のフィルがイングランド女子代表前監督で、妹のトレイシーがネットボール女子代表の元監督というバックグラウンドからしても、打って付けのリーダー候補と思える。
ビッグ6の謀反を招いた国内の下地を変えなければ
ネビルは今回のESL創設構想の失敗を「イングランド・サッカー界に対する殺人未遂」とまで言って非難したが、同様のスタンスを取る首相から庶民までが心を1つにした「サッカーの母国」は、ビッグ6による謀反を招いた国内の下地を変えなければならない。
今日も、緊急時や変革期のリーダーとして国民が尊敬の眼差しを向けるウィンストン・チャーチルは、「良い危機を無駄にするな」との名言も残している。
ESLのオウンゴールに終わった今回の創設騒ぎを、ESLに対する決勝ゴールとする覚悟で行動を起こすべきだ。さすればスペインで"ESL 2"を画策するターミネーターの親分から「アスタ・ラ・ビスタ(またな)」と言われても、恐れることはない。
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